
下半期の事業計画を生成AIで加速する — 経営者のためのプロンプト設計3ステップ
この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。
3月決算の会社であれば、10月から始まる下半期の計画を固めるのは8〜9月です。7月の今が、上期の数字を眺めながら方針を練り始めるちょうどいい時期にあたります。
問題は、この作業に付き合ってくれる相手が社内にいないことです。役員や幹部に相談しても「社長が決めてください」で終わる。結局、経営者が一人で数字とにらめっこすることになります。生成AIは、この「壁打ち相手がいない」という状態を埋めるのに向いています。
計画づくりでAIが効くのは「広げる」と「潰す」
計画づくりは、選択肢を広げる作業、決める作業、決めた案の穴を潰す作業の3つに分かれます。AIが力を発揮するのは最初と最後です。真ん中の「決める」は、資本と責任を持つ経営者にしかできません。ここを取り違えると、もっともらしいだけの計画書ができあがります。
ステップ1: 上期の実績を10行で渡す
AIは自社のことを何も知りません。数字を渡さずに「事業計画を作って」と頼めば、どの会社にも当てはまる一般論が返ってくるだけです。逆に、実績を10行ほど渡すだけで出力は一変します。
あなたは中小企業の経営企画担当者です。 以下は当社の上期実績です。ここから読み取れる 「伸びている点」「悪化している点」「原因が不明な点」を それぞれ3つずつ挙げてください。
【会社】製造業(金属加工)/従業員25名/3月決算 【上期実績】
- 売上: 1億2,400万円(前年同期比 +6%)
- 粗利率: 22%(前年同期 26%)
- 新規取引先: 3社(目標5社)
- 主な施策: 展示会出展2回、Web問い合わせ経由の見積18件
原因が不明な点は、私に確認すべき「質問」の形で書いてください。
最後の一文が肝心です。AIに推測で埋めさせるのではなく、質問を返させることで、自分でも気づいていなかった論点が浮かび上がります。
ステップ2: 施策は30案出させて3つに絞る
ここでよくある失敗が「良い施策を5つ提案して」と頼むことです。数を絞ると、AIは無難な案しか出しません。
代わりに「実行可能性は一切考慮せず、30案」と指示します。30案のうち20案以上は使い物になりませんが、残りに自社の経験の外にある発想が1〜2個混じります。それを拾えれば十分な成果です。絞り込みは、投資額と着手までの期間を基準に自分で行ってください。
ステップ3: 決めた計画に反論させる
案が固まったら、AIを賛成側ではなく反対側に立たせます。「事前検死(プレモーテム)」と呼ばれる手法です。
下半期の重点施策は以下の3つです。
- 既存取引先向けの単価見直し(粗利率 22% → 25%)
- Web問い合わせへの見積提出を48時間以内に短縮
- 展示会を年1回に減らし、その分を営業訪問に振り替える
いまは2027年3月末で、この計画は未達に終わりました。 その原因を、可能性の高い順に10個挙げてください。 社内の反対、現場の負荷、季節要因も含めて具体的に書いてください。
そのうえで、いま手を打つべき対策を3つ提示してください。
「失敗した」と過去形で断定するのがコツです。「リスクは何か」と聞くより、具体的で痛いところを突いた指摘が返ってきます。
AIに任せてはいけない3つのこと
第一に、市場規模や業界平均をAIに尋ねないこと。それらしい数字を提示してきますが、出典のない生成物です。計画の根拠に使う数字は、自社の実績か一次情報に限ってください。
第二に、顧客名や原価などの機密情報の扱い。無料版のチャットサービスに貼り付ける前に、自社の利用ルールを確認してください。業種と規模だけ伝えれば、出力の質は十分に保てます。
第三に、出てきた文章をそのまま計画書にしないこと。AIの文章は整いすぎていて、読んだ社員に他人事として受け取られます。骨格だけ借りて、自分の言葉で書き直す工程を必ず挟んでください。
えらびの道では、こうした経営判断の場面での生成AI活用を扱う研修を提供しています。自社の数字を題材に手を動かしてみたい方は、内容をご覧ください。
下半期の計画づくりを、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。とはいえ研修専門の会社ではありません。普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしており、生成AIはそこで毎日使っている道具のひとつです。机上の知識ではなく、日々の実務で分かったことをお伝えしています。
研修では、汎用的な事例ではなく貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。上期の実績資料や事業計画書をお持ちいただければ、この記事で紹介した振り返りの整理や施策の洗い出し、事前検死のプロンプトを、貴社の数字に合わせて作り替えます。翌日から使える状態で持ち帰っていただくことを目指しています。
費用面では、大分市の人材育成応援事業などの補助金を使える場合があります。制度の対象になりそうかどうかの確認から、申請書類の作成まで一緒に進めます。ヒアリングに伺うのも当日に立つのも代表の喜多本人ですので、お聞きした話がそのまま研修の中身になります。
まずは現状をお聞かせいただくところからで構いません。えらびの道ではオンラインでの相談を30分お受けしており、費用はかかりません。計画づくりのどこにAIを挟めそうか、一緒に見立てます。
よくある質問
上期の実績が細かく集計できていなくても使えますか?
売上や粗利率など、手元でわかる範囲の数字だけでも構いません。記事の例のように10行ほど渡せば、返ってくる内容は変わります。不明な点はAIに質問の形で返させ、後から確認する項目として整理していくほうが、計画づくりは前に進みます。
3月決算ではない会社でも同じ進め方でいいですか?
手順そのものは決算月に左右されません。自社の下半期が始まる前、上期の数字がおおむね見えてきた時点で着手すれば、同じように使えます。大切なのは時期よりも、振り返り・施策出し・反論の3つの工程を分けて回すことです。
AIで作った計画を金融機関や補助金の申請に使ってもいいですか?
骨格を整理する下書きとしては役に立ちますが、そのまま提出する用途には向きません。根拠となる数字は自社の実績や一次情報に置き換え、文章は自分の言葉で書き直してください。求められる様式や要件については、提出先の窓口に確認するのが確実です。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
あわせて読みたい
AIで書いた事業計画書を持って融資相談に行ったら、質問が止まりました — 秋の設備投資資金で銀行が見ている4つの整合
生成AIで作った事業計画書は、体裁が整っているほど決算書との食い違いが目立ちます。秋の設備資金の相談で銀行の質問が止まる4つの失敗と、AIが書いた文章だと分かる癖を、金属加工業の想定ケースで整理しました。
応募が来ない求人票を生成AIで書き直す — 秋採用に間に合わせる中小企業のリライト3ステップ
閲覧はされるのに応募が来ない求人票を、1本30分で書き直す手順を3ステップで解説。職種名の見直しから条件面の先回りまで、プロンプト例つきで秋採用に間に合わせます。
プロンプトの書き方入門 — AIから良い回答を引き出す4つの型
「AIに聞いても的外れな回答しか返ってこない」——それはプロンプトの書き方の問題かもしれません。4つの基本型を覚えれば、AIの回答品質は劇的に変わります。

