AIで書いた事業計画書を持って融資相談に行ったら、質問が止まりました — 秋の設備投資資金で銀行が見ている4つの整合

事業計画資金調達生成AI活用

この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。

9月から10月にかけて、設備資金の相談で銀行に足を運ぶ会社が増えます。従業員32名の金属加工業が、マシニングセンタの入れ替えに2,400万円、うち2,000万円を借入で調達したいと相談に行きました。計画書は生成AIで一晩、20ページ。ところが面談が始まって15分ほどで、担当者の質問が止まりました。手応えがあったからではありません。書いてある数字を決算書と突き合わせるのを、途中でやめただけでした。銀行が計画書に対して見ているのは文章の巧拙ではなく、4か所の整合です。

前期の決算書を開かないまま、計画だけをAIに書かせています

AIに渡す前期の実数

AIに渡したのは、業種と従業員数と年商の3つだけでした。前提が薄ければ、AIは業界の平均的な姿で行間を埋めます。計画の初年度に売上7%増、売上総利益率28%と書かれていても、前期の決算書の売上総利益率が22.4%なら、その5.6ポイントの差を説明する行がどこにもありません。銀行は面談の前に3期分の決算書を読み終えています。最初の1枚で数字がつながらないと、残りの19ページも同じ精度だと見なされます。

防ぎ方は単純で、書かせる前に実数を渡すことです。前期と前々期の売上高・売上総利益率・営業利益・減価償却費・借入金残高・年間返済額、それに直近の試算表を1枚にまとめ、そこから外れる数字を書かないよう指示します。売上総利益率のように社内でも定義が揺れる数字は、渡す前に定義を一つに決めておく必要があります。

あわせて読みたい上期末の着地見込みをAIに出させたら粗利が合わない — 中小企業が売上・在庫データを渡す前に決めておく4つの定義

設備を入れる理由が「生産性の向上」だけで止まっています

設備投資で変わる数字

投資の目的の欄に、生産性の向上、品質の安定、DXの推進と並んでいました。AIは現場を見ていませんので、目的語のない言葉で埋めます。担当者が知りたいのは、その機械が入ると何が何時間・何円変わるのかという一点です。答えが返ってこないと、そこから先を掘る意味がなくなります。

書くべきは現場の数字です。段取り替えに1回45分かかっていたのが15分になり、月120回で60時間が空きます。いま外注に出している加工が月180万円あり、そのうち110万円分を内製化できるなら、年に直して1,320万円が社内に戻ります。この2つの数字はAIからは出てきません。工場長が持っている日報と、外注先への発注明細から拾う数字です。

返済原資の計算に、減価償却費が入っていません

損益計画は作っても、返済原資の欄が空いたままの計画書をよく見かけます。AIは頼まれた表しか作りません。設備資金は返済期間が長く、既存の借入と重なります。銀行が最初に電卓を入れるのは、返済原資が年間の返済額を上回っているかどうかです。返済原資は税引後利益に減価償却費を足したもので、新しい機械の償却費も翌期から原資の側に加わります。ここを入れ忘れると、自社の計画が実際より苦しく見えてしまいます。

見る項目 計画初年度に置く金額 突き合わせる書類
税引後利益 620万円 損益計画書
減価償却費 1,040万円 固定資産台帳
返済原資の合計 1,660万円 資金繰り表
年間の返済額 1,436万円 借入金の返済予定表

この例では差が224万円しか残りません。数字としては通る場合もありますが、「売上が計画どおりに立たなかったとき、どこまで耐えられますか」は必ず聞かれます。売上が1割下振れしたときの返済原資も並べて出しておくと、質問の一往復が減ります。

実在しない制度の名前が、そのまま計画書に載っています

AIに書かせない4項目

資金調達の欄に、実在しない補助金の名前が書かれていることがあります。AIは制度名の部品を組み合わせて、それらしい固有名詞を作ります。すでに終わった公募回、古い年度の名称、実際とは違う補助率も同じように混ざります。銀行の担当者は制度の名前に詳しく、1か所の誤りが見つかった時点で、残りの数字を自分で検算し始めます。質問が止まるのはこの瞬間です。

制度名・年度・補助率・締切は、AIに書かせない項目として先に決めておきます。所管の官庁や自治体の公募ページを開き、そこに書かれている表記のまま転記します。存在しないものを自信を持って書く現象は融資の書類に限った話ではなく、契約書のレビューでも同じ形で起きます。

あわせて読みたい生成AIの契約書レビューで「存在しない条文」に騙されない — 中小企業が使える検証3ステップ

「これはAIで書きましたか」と聞かれる文章には、癖があります

依頼文に入れる4点

内容とは別に、読んだ瞬間に分かる書きぶりというものがあります。

  • 主語が大きく、「昨今の人手不足の深刻化を背景に」のような一文で段落が始まります
  • 数字がきれいに揃い、3年とも成長率がちょうど10.0%になります
  • 「また」「さらに」「加えて」で段落の頭が続き、どこを読んでも同じ調子になります
  • 固有名詞が出てこず、機械の型番も、取引先の業種も、担当者の役職も書かれていません

一番効くのは4つ目です。自社の言葉が入っていれば、多少ぎこちなくても疑われません。依頼文の側で固定しておきます。

# 前提として渡す実数(この範囲から計算できないことは書かないでください)
- 前期実績: 売上高6億2,000万円 / 売上総利益率22.4% / 減価償却費800万円
- 既存借入: 残高8,700万円 / 年間返済額1,150万円
- 新規設備: マシニングセンタ2,400万円(自己資金400万円・借入2,000万円・返済7年)
- 内製化の対象: 外注加工 月180万円のうち110万円分

# 書き方の指示
- 制度名・補助率・締切は書かず【要確認】と置いてください
- 「生産性の向上」「DXの推進」のような一般論は使わず、時間と金額で書いてください
- 根拠になる数字が足りない箇所は、埋めずに質問として最後にまとめてください

最後の1行を入れておくと、社内で決まっていない前提がその場で表に出てきます。そこで出てくる質問は、銀行から聞かれる質問とほぼ重なります。下期の計画づくり全体をAIと進めるときの前提の置き方も、土台はこの形です。

えらびの道では、生成AIの業務活用について、半日で終わる単発の研修と標準コースをご用意しています。あわせて、実際の業務に伴走するコーチングも行っており、今回のような計画書づくりでは、決算書から前提の数字を抜き出す作業と、AIに渡す依頼文の設計を一緒に進めます。人材開発支援助成金や自治体の補助金の活用にも対応しています。まずは貴社の前期の決算書と、AIが出した計画書を並べて、どこがつながっていないかを見るところからで構いません。

決算書とつながる計画書に直すところまで、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。研修を専門にしている会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしていて、生成AIはそこで毎日使っている道具のひとつです。そのため、机上の知識ではなく、実際に使ってみて分かったことをお伝えできます。

研修では、貴社が実際にお使いの書類をそのまま題材にします。事業計画書であれば、決算書から前提として渡す実数を抜き出す作業、設備投資で変わる時間と金額の書き出し、返済原資と年間返済額を並べる表づくりまでを、実物を前に一緒に手を動かします。翌日から使える形で持ち帰っていただきます。

事前のヒアリングに伺うのも、研修当日に立つのも、代表の喜多が担当します。うかがった貴社の事情と数字が、そのまま当日の題材になります。大分市の人材育成応援事業などを使う場合は、申請書類の作成もお手伝いします。

銀行への相談日がまだ決まっていない段階でも構いません。えらびの道では、オンラインで30分ほどのご相談を承っています。費用はかかりません。前期の決算書とAIが出した原稿を並べて、どこがつながっていないかを見るところからで構いません。

よくある質問

事業計画書を生成AIで作っても融資は通りますか?

下書きにAIを使うこと自体が問題になることはありません。見られているのは、決算書と計画の数字がつながっているか、返済原資が年間の返済額を上回っているかです。前期の実数を前提として渡し、出てきた原稿を試算表と突き合わせてから持参してください。

銀行にAIで作ったと伝えたほうがよいですか?

聞かれれば下書きに使ったとお答えして差し支えありません。問題になるのは作り方ではなく、持参した本人が数字の根拠を説明できない状態です。面談の前に、計画書の各数字がどの書類のどこから来たのかを一度たどっておくと、その場で答えられます。

設備資金の計画書は、何から書き始めればよいですか?

その設備を入れると何が何時間・何円変わるのかを、現場の日報と外注の発注明細から拾うところからです。そのうえで税引後利益と減価償却費を足した返済原資を出し、既存借入を含めた年間返済額と並べます。文章を整えるのは、その後で構いません。

ご相談は、お電話が一番早いです

研修の内容・料金・補助金の使い方まで、その場でお答えします

097-507-3082

不在時は折り返しご連絡します

この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。

あわせて読みたい

部下がAIで書いた報告書が3倍に伸び、課長の確認時間が増えました — 上期の振り返りと下期計画が集まる10月に、管理職が「ワークスロップ」を止める依頼・自己点検・AI使用の申告・差し戻しの4つの失敗

AIで書かれた長い報告書を読む時間が、課長に回っていませんか。10月に上期の振り返りと下期計画を受け取る管理職向けに、依頼の書き方・自己点検・AI使用の申告・差し戻しの基準で起きる4つの失敗と防ぎ方をまとめました。

生成AIが作った面接質問に「尊敬する人物は?」が入っていました — 10月1日に義務化された就活セクハラ防止と公正採用選考で、中小企業が面接官に渡す前に見直す質問・面談の場所・SNS連絡・記録の4点

生成AIで作った面接質問には、公正採用選考で避けるべき質問が混ざることがあります。10月1日に義務化された求職者へのセクハラ防止措置とあわせて、面接官に渡す前に見直す4つの失敗を解説します。

AIで受注入力が減った事務職に「来月から営業へ」と言えるか — 労働条件通知書の「業務の変更の範囲」と職種限定合意で分かれる4つの判断

AIで受注入力が減った事務の社員を営業へ移せるかどうかは、労働条件通知書の「業務の変更の範囲」と職種限定の合意で分かれます。下期の配置転換の前に確かめる4つの判断を表で整理します。