
生成AIの契約書レビューで「存在しない条文」に騙されない — 中小企業が使える検証3ステップ
契約書レビューのハルシネーションは、気づけないから怖い
生成AIに契約書を読ませて「発注者に不利な条項を挙げて」と頼むと、数十秒でそれらしい指摘が返ってきます。問題は、その中に事実でないものが混ざっていても、読み手がまず気づけないことです。
実際によく見るのは3つです。ひとつめは、存在しない条文番号を挙げること。「民法第○○条により無効です」と書かれていても、その条番号が現行法にないことがあります。ふたつめは、古い用語で答えること。2020年4月施行の改正民法で「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に整理されましたが、AIは旧用語のまま説明することがあります。みっつめは、断定です。「この条項は一般に無効」と書かれていても、実際には取引の実態や交渉の経緯で結論が変わる論点は少なくありません。
契約書は、間違いに気づくのがトラブルの発生後になりやすい文書です。だからこそ、出力を疑う手順を先に決めておきます。
ステップ1:AIに「原文の引用」を義務づける
ハルシネーションの多くは、AIが要約の勢いで原文にない内容を作ってしまうことで起きます。これは、指摘のたびに原文をそのまま引用させるだけでかなり減ります。引用できない指摘は書かせない、というルールにします。
あなたは契約書レビューの補助者です。以下の業務委託契約書について、
発注者側にとってリスクのある条項を指摘してください。
【必ず守る形式】
1. 指摘ごとに、契約書の該当箇所を「原文のまま」引用する
2. 原文を引用できない指摘は書かない
3. 法令に触れる場合は、法令名と条番号、施行時期を明記する
4. 解釈が分かれる論点には「要確認」とラベルを付ける
5. 末尾に「条文の現行性は未確認」と1行入れる
【契約書】
(ここに本文を貼り付け)
引用さえ出てくれば、契約書ファイルを Ctrl+F で検索するだけで真偽が判定できます。ここで見つからない指摘は、この時点で捨てます。
ステップ2:法令と数字は一次情報で裏を取る
検証が必要な箇所は「法令」と「数字」に集中しています。逆に言えば、この2つだけ確認先を決めておけば、あとは流れ作業になります。
| 確認する内容 | 一次情報の確認先 | 目安 |
|---|---|---|
| 条文の存在・現行の文言 | e-Gov法令検索 | 3分 |
| 下請取引の支払期日・禁止行為 | 公正取引委員会サイト | 5分 |
| 収入印紙の要否と税額 | 国税庁「印紙税額の一覧表」 | 3分 |
| 業界の標準的な条項 | 経済産業省などのモデル契約書 | 5分 |
| 自社の過去契約との差 | 社内の締結済み契約 | 5分 |
法改正が続く分野ほど、AIの回答は静かに古くなります。確認した先と確認日をレビュー結果に書き添えておくと、後から見返したときに判断の根拠が残ります。
ステップ3:AIに任せない範囲を先に線引きする
3つめは、そもそも判断させない範囲を決めることです。任せてよいのは、条項の抜け漏れチェック、用語の不統一、期限や金額の転記ミス、読みにくい条文の言い換え、想定リスクの列挙。任せないのは、締結の可否、賠償額の上限の妥当性、独占禁止法に触れるかどうかの最終判断、相手方に送る回答文の確定です。
そのうえで、2本目のプロンプトで自分の出力を叩かせます。
以下のレビュー結果を検証してください。あなたの役割は粗探しです。
- 引用された「原文」が契約書に実在するか一字一句照合し、
一致しないものは「不一致」と明記する
- 法令名・条番号が現行のものか、旧法の用語が混ざっていないか指摘する
- 受注者側から反論があり得る指摘は、その反論も書く
【契約書原文】…
【レビュー結果】…
同じAIでも、役割を「粗探し」に変えるだけで見落としが減ります。ここを通過した指摘だけを人が読みます。
検証を30分の定型作業に落とし込む
3ステップを合わせても、慣れれば契約書1本あたり30分ほどです。内訳は、引用付きレビューの生成に5分、原文照合に10分、一次情報の確認に10分、反証と最終判断に5分。最初から人が通読するより短く、しかも「何を確認したか」が記録に残ります。逆に、この30分を省くのであれば、契約書にAIは使わないほうが安全です。
えらびの道では、生成AIの業務活用を研修とコーチングの2軸で支援しています。研修は半日の単発と標準コースがあり、ハルシネーションの見抜き方や、原文引用を義務づけるプロンプトの書き方を演習として扱えます。コーチングでは、実際に自社で使っている契約書を題材に、確認先の一覧づくりとAIに任せない範囲の線引きを一緒に決め、レビュー記録のフォーマットまで作ります。人材開発支援助成金や自治体の補助金の活用にも対応していますので、費用面を含めて事前にご相談ください。
契約書レビューの検証手順づくりまで、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、大分県の中小企業向けに生成AIの業務活用研修を行っています。とはいえ研修専門の会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしています。生成AIはその現場で毎日使っている道具のひとつなので、便利な場面と危うい場面の両方をお話しできます。
研修では、貴社が実際にやり取りしている契約書をそのまま題材にします。市販のサンプルではなく、手元の業務委託契約書や注文請書を使って、原文の引用を義務づけるプロンプト、法令の確認先、AIに任せない範囲の線引きを一緒に決めていきます。翌日から社内で回せる形にして持ち帰っていただくことを目指しています。
進め方としては、事前のヒアリングに伺うのも当日に立つのも代表の喜多で、聞いた話がそのまま研修の内容になります。大分市の人材育成応援事業などを使う場合は、申請書類の作成もお手伝いします。
契約書レビューのどこまでをAIに任せるか、まだ決めきれていない段階でも構いません。えらびの道では、オンラインで30分ほどの相談をお受けしています。費用はかかりませんので、まずは現在の困りごとをお聞かせください。
よくある質問
契約書をそのまま生成AIに貼り付けても大丈夫ですか?
取引先の社名や金額が含まれる文書なので、入力してよい範囲を社内で先に決めておくほうが安全です。利用しているサービスの規約やデータの取り扱い設定を確認したうえで、判断がつかないうちは社名や個人名を伏せた状態で試すところから始めてください。
AIが何も指摘しなかった条項は、問題ないと考えてよいですか?
指摘がないことは、問題がないことの裏づけにはなりません。この記事の3ステップは、AIが出した誤りを見抜くための手順であって、見落としをなくすものではありません。抜けが不安な条項は、社内の締結済み契約と読み比べて確認してください。
AI研修の費用に助成金は使えますか?
人材開発支援助成金や自治体の補助金の活用には対応していますが、貴社が該当するかどうかは要件によって変わり、こちらだけでは判断できません。最終的な可否は労働局や自治体の窓口の確認になりますので、まずはご相談いただければ進め方からお手伝いします。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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