
上期末の着地見込みをAIに出させたら粗利が合わない — 中小企業が売上・在庫データを渡す前に決めておく4つの定義
9月末で上期が締まる会社では、8月のうちに着地見込みを作り始めます。販売管理システムからCSVを書き出し、生成AIに渡して「上期の粗利を見込みで出してください」と頼むと、数十秒でそれらしい表が返ってきます。ところが経理が締めた数字と並べると、粗利率が1〜2ポイント違う。よくいただくご相談ですが、原因はAIの計算間違いよりも、渡したデータの定義が社内で揃っていないことにあります。決めておくべき線は、大きく4本です。
1本目: 「売上」がどの時点の数字かを決めておきます
書き出したCSVには、受注日・出荷日・請求日・入金日が並んでいます。AIは指定がなければ、日付らしい列を自分で選んで集計します。会計上は出荷や検収の時点で売上を立てているのに、AIが受注日で集計すれば、月をまたいだ大口案件がまるごと片側に寄ります。渡す前に、どの列を売上日として使うかを1行で書き添えてください。決算で使っている基準と一致させ、使わない日付列は削って渡すのが確実です。
2本目: 税込と税抜のどちらで渡すかを決めておきます
売上は税抜、仕入は税込のファイルを混ぜて渡すと、粗利は消費税の分だけ小さく出ます。自社が税抜経理と税込経理のどちらを採っているかを確認し、片方に揃えます。
仕入側では制度の切り替わりも効いてきます。国税庁のインボイス制度特設サイトで案内されている、免税事業者からの仕入れに係る経過措置では、仕入税額控除できる割合が期間で区切られており、2026年10月1日以降は50%に下がります。免税事業者からの仕入が残っている会社が、10月以降の見込みを9月までと同じ原価単価で置くと、原価が実際より小さく出ます。控除割合や区分は改正で変わりますので、試算に入れる前に最新の内容をご確認ください。
3本目: 在庫の単価は、会社が決めた評価方法から動かしません
在庫一覧を渡して「上期末の在庫金額を出してください」と頼むと、AIは単価列の平均を取って計算することがあります。棚卸資産の評価方法は税務署への届出で決まっていて(届け出ていない場合は法定の方法によります)、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法などが使われます。経理と違う方法で計算されれば、売上原価がずれ、粗利もずれます。評価済みの単価列を先に作ってから渡し、その列以外で単価を作らないよう指定してください。帳簿在庫と実地棚卸の差も、AIには見えません。表計算のマクロで集計している場合は、作った本人がいなくなったときに中身が読めるかも合わせて確認しておきたいところです。
4本目: 渡してよいデータの範囲を先に切ります
売上明細には、取引先名・担当者名・個別単価・掛率が入っています。個人事業主の屋号や担当者の氏名は個人情報にあたる場合があり、取引先との秘密保持契約が第三者への提供を制限していることもあります。使っているAIサービスが入力内容を学習に使わない設定かどうかも、部署や契約プランによって差が出ます。誰がどのデータをどのツールに入れてよいかは、着地見込みの都度ではなく社内ガイドラインの側で決めておく話です。着地見込みを出すだけであれば、取引先名を得意先コードに置き換え、金額を千円単位に丸めても計算は成立します。
4本の線を1枚の確認表にします
| 引く線 | 渡す前に決めること | 決めないまま渡すと起きること | 突き合わせる先 |
|---|---|---|---|
| 売上の計上時点 | 出荷日を売上日として使うこと | 受注ベースの売上が混ざること | 販売管理システムの出荷実績 |
| 消費税の建て方 | 売上も仕入も税抜に揃えること | 仕入の消費税が原価に入ること | 試算表と自社の経理方式 |
| 在庫の評価方法 | 届出どおりの単価列を渡すこと | AIが単純平均で単価を作ること | 棚卸資産の評価方法の届出 |
| 持ち出しの範囲 | 取引先名と個別単価を伏せること | 契約で守る情報が外に出ること | 秘密保持契約の提供制限条項 |
決めた内容は、依頼文の冒頭に前提として書き込みます。
# 前提(この定義から外れる計算はしないでください)
- 売上日: 「出荷日」列を使ってください。受注日・入金日では集計しないでください
- 金額: すべて税抜です。消費税は加算しないでください
- 在庫単価: 「評価単価」列をそのまま使い、平均などで再計算しないでください
- 対象期間: 2026年4月1日〜9月30日(9月は10日時点の実績+残21日の見込み)
# 依頼
上記の前提で、上期の売上高・売上原価・売上総利益・粗利率を出してください。
見込みを置いた行には「見込み」と明記し、置いた根拠を1行で書いてください。
前提にない数字が必要になったら、推定せずに質問として返してください。
最後の1行が効きます。前提を書かずに渡すと、AIは足りない数字を黙って埋めますが、質問として返すよう指示しておけば、社内で決まっていない定義がその場で表に出てきます。出てきた数字は経理の実績と品目単位で突き合わせ、差額の大きい行から原因を潰していきます。ここまで整えば、下期の事業計画をAIと組み立てるときにも、同じ定義をそのまま使えます。
えらびの道では、生成AIの業務活用について、半日で終わる単発の研修と、標準コースをご用意しています。あわせて、実際の業務に伴走するコーチングも行っており、今回のような着地見込みの試算では、渡す前の定義出しと依頼文の設計を一緒に進めます。人材開発支援助成金や自治体の補助金の活用にも対応しています。まずは自社のデータのどこに線を引くべきか、現状の帳票を見ながら整理するところからで構いません。
数字の定義を揃えるところから、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。研修だけを専門にしている会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしており、生成AIはその現場で毎日使っている道具のひとつです。だからこそ、渡すデータの形で結果がどう変わるかを、実務の側からご説明できます。
研修では、貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。販売管理システムから書き出したCSVを開いて、どの列を売上日とするか、税込と税抜のどちらに揃えるか、在庫の単価をどう固定するかを、その場で一緒に決めていきます。着地見込みを頼むときの依頼文と確認表を、翌日から使える形で持ち帰っていただけます。
事前のヒアリングに伺うのも研修当日に立つのも、代表の喜多が同じように担当します。大分市の人材育成応援事業などの制度をお使いになる場合は、申請書類の作成もお手伝いしています。
まずはオンラインで30分ほど、お話をお聞かせください。費用はかかりません。いまの集計のどこがずれているのかを一緒に整理するところから、ご相談いただけます。
よくある質問
生成AIに自社の売上データを渡しても大丈夫ですか?
取引先名や担当者名、個別の単価が入ったままの提供は避けてください。得意先コードへの置き換えや金額の丸めで、着地見込みの計算は成立します。使っているサービスが入力を学習に使わない設定かどうかも、契約プラン単位で確認しておくと安心です。
AIが出した着地見込みは、どこまで信じてよいですか?
計算そのものは正確ですが、前提の解釈はAIが勝手に補います。売上日、税の建て方、在庫単価の3点を依頼文で固定したうえで、経理の実績と品目単位で突き合わせてください。差が出た行の原因が説明できれば、社内で使える数字になります。
消費税は税込と税抜のどちらで渡すのが正しいですか?
自社の経理方式に合わせて、売上と仕入を同じ建て方に揃えることが先決です。税抜経理なら両方とも税抜で渡します。なお免税事業者からの仕入がある場合、仕入税額控除の経過措置は期間ごとに割合が変わりますので、最新の区分を確認してから原価を置いてください。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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