社長の声で「振込先が変わった」と電話が来ました — 生成AIの音声偽装と偽請求書が狙う年末の支払い集中期に、経理と現場で引く本人確認の4本の線

生成AI情報セキュリティ経理

この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。

「振込先が変わったので、今月分はこちらへ頼む」。受話器の向こうは、間違いなく社長の声でした。経理担当者は言われたとおりに振り込み、翌週、取引先からの入金確認の電話で初めて気づきます。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて入りました。AIの悪用によるサイバー攻撃の容易化や手口の巧妙化が、その中身として挙げられています。年末は支払いが集中し、確認の手が最も回らなくなる時期です。

声が本人だったので、折り返しの電話をしませんでした

偽装の前提となる数字

声は長いあいだ「本人の証拠」として使われてきました。ところが素材は、いまや社外に置かれています。会社紹介動画、展示会の登壇、採用ページのインタビュー、留守番電話の応答メッセージ。数十秒あれば足ります。発信者番号の表示も当てにはなりません。

引く線の1本目は「折り返しの宛先」です。かかってきた番号にかけ直すのではなく、自社の取引先台帳や社内名簿にある番号へかけ直します。相手が電話口で伝えてきた番号は使いません。台帳に番号が載っていない相手であれば、その時点で支払いを止めます。

確認に使うもの 偽装して作れるか 単独で本人確認に使えるか
電話口の声 数十秒の音源があれば作れます 使えません
送信元のメールアドレス 表示名も似たドメインも作れます 使えません
請求書PDFの体裁と印影 画像として作れます 使えません
相手が電話で伝えてきた番号 相手の側で自由に作れます 使えません
自社の取引先台帳にある番号 社外からは書き換えられないので作れません 使えます

口座変更の連絡が、メールと電話と現場の担当者から別々に入っていました

口座変更の受付経路

IPAのビジネスメール詐欺(BEC)対策ページでは、手口の類型として「取引先との請求書の偽装」と「経営者等へのなりすまし」が挙げられています。どちらも、既存のやり取りに割り込む形をとります。過去のメールが1通でも手に入れば、署名も言い回しも写した文面は短時間で作れてしまいます。

2本目は「受付経路」です。口座変更は所定の変更届と台帳番号への折り返し、この1本でしか受け付けないと決めます。メール・電話・チャットで届いたものは受付になりません。この線は社内だけで決めても効きませんので、取引先へ先に案内を出しておきます。社内ルールとしてどこに書くかは、生成AIを安全に使うための社内ガイドラインの中に一項目として置くと管理しやすくなります。

当社の「振込先変更の受付ルール」を、取引先に送る案内文にしてください。
条件:①変更は所定の変更届のみで受け付けます ②当社から台帳の番号へ
折り返して確認します ③メール・電話・チャットだけでは変更しません
④確認が取れるまでは旧口座へ支払います
400字程度、事務的で角の立たない言い回しにしてください。

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年末で支払件数が普段の3倍になり、二重確認だけを飛ばしました

繁忙期に閉じる例外ルート

12月は締めと支払いが重なり、承認者が出払います。攻撃側は「今日中に」「社長は会議中です」と急がせてきます。急かしと繁忙が重なったとき、最初に省かれるのが二重確認です。

3本目は「承認」です。繁忙期こそ例外ルートを閉じます。金額の線(一定額以上は代理承認を認めません)と、時間の線(当日着金の依頼は受けず翌営業日に回します)を、忙しくなる前に紙にしておきます。年末に取引先が増える会社では、AIに調べさせた与信情報の落とし穴とあわせて、口座情報も同じタイミングで台帳に登録します。

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「この請求書は本物か」をAIに判定させていました

差分はAI、判定は人

AIは書式の整合性までは見られますが、その口座が正しいかどうかは判定できません。体裁が整った偽物ほど「問題ありません」と返ってきます。真贋を聞いた時点で、確認は止まっています。

4本目は「判断」です。AIには差分の抽出までをさせ、判定は台帳と人が持ちます。

あなたは経理の照合担当です。次の2つを項目ごとに突き合わせ、
「一致」「不一致」「台帳に記載なし」の3分類で表にしてください。
本物かどうかの判定や、推測での補完は書かないでください。

【1】当社の取引先台帳(抜粋)
会社名/請求書の宛名/登録口座(銀行・支店・預金種別・口座番号・名義)/
支払サイト/前回請求額

【2】今回届いた請求書の記載内容
(上と同じ項目を貼り付けます)

出力は不一致の行を先頭に並べ、最後に「台帳にない情報」を箇条書きにしてください。

えらびの道では、半日の単発研修と標準コースで、貴社が実際に受け取った請求書やメールを題材に「AIに出させる差分」と「人が決める判定」を切り分ける演習を行っています。コーチングでは、貴社の取引先台帳と支払承認のフローに合わせて、変更届の様式づくりと折り返し手順の定着まで伴走します。費用面では人材開発支援助成金や自治体の補助金の活用に対応しており、対象の見分け方はAI研修に使える助成金・補助金まとめに整理しています。研修を受けただけで詐欺が止まるわけではありませんので、線を書いて運用に載せるところまでを一緒に進めます。

振込先の確認に線を引くところまで、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。ただ研修専門の会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用が本業で、生成AIはその現場で毎日使っている道具のひとつです。声や文面がどこまで作れてしまうのかも、実際に触りながら確かめています。

研修では、貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。この記事で扱った振込先の変更でいえば、貴社の取引先台帳と支払依頼の書式を開いて、折り返しの宛先・受付経路・承認の線をどこに引くかを書き出します。取引先へ出す案内文も、貴社の実際の取引先に合わせて整えます。翌日から使える形で持ち帰っていただきます。

事前のヒアリングに伺うのも当日に研修を行うのも同じ人間(代表の喜多)です。経理と現場では見えているものが違いますので、伺った双方の事情がそのまま当日の題材になります。大分市の人材育成応援事業などの補助金を使う場合は、申請書類の作成もお手伝いします。

支払いのどこが薄いのかを一度整理したい、という段階でも構いません。えらびの道では、オンラインで30分のご相談をお受けしています。費用はかかりませんので、お気軽にお声がけください。

よくある質問

生成AIで作られた音声は、聞いて見分けられますか?

短い通話では難しいとお考えください。息づかいや間の取り方まで似せられるため、耳での判別は当てになりません。声で判断せず、台帳にある番号へかけ直す、所定の様式でしか受け付けないといった手順の側で止めるほうが確実です。

振込先の変更依頼は、メールで受け付けてはいけませんか?

メールを入口にするのは構いませんが、それだけで口座を書き換えないでください。変更届を受け取り、取引先台帳にある番号へ貴社から折り返して確認が取れてから反映する、という二段構えにします。確認が済むまでは旧口座へ支払います。

すでに偽の口座に振り込んでしまいました。まず何をすればよいですか?

気づいた時点で、自社の取引銀行に組戻しと振込先の口座凍結を相談し、あわせて警察へ届け出てください。時間が経つほど回収は難しくなります。並行して、同じ手口の連絡が他部署にも届いていないかを確認します。

ご相談は、お電話が一番早いです

研修の内容・料金・補助金の使い方まで、その場でお答えします

097-507-3082

不在時は折り返しご連絡します

この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。

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