大分の宿・観光事業者が秋前に整える多言語案内とクチコミ返信 — 生成AIで「その場しのぎの翻訳」をやめる

生成AI活用インバウンド対応大分の中小企業

夏の終わりに、由布院の宿の女将さんから聞いた話があります。台湾からの予約が入るたび、その都度スマホの翻訳アプリに文章を打ち込んで、送信していました。到着案内、駐車場の場所、夕食の時間。同じことを、毎回ゼロから訳しています。

「去年なんて書いたか、探すのに10分かかるんです」

これは翻訳の問題ではありません。同じ内容を、毎回作り直しているという問題です。9月から11月にかけて予約が動き出す前に、ここを直しておきます。

多言語対応が続かない理由は、翻訳精度ではない

多言語対応が続かない3つの理由

大分の中小企業、とくに宿泊・観光の事業者が多言語対応でつまずくのは、たいてい次の3点です。

つまずき 実際に起きること 直し方の方向
毎回ゼロから訳します 同じ案内文を年に何十回も作り直します 定型文を先に確定させます
訳語がバラバラです 「露天風呂」がopen-air bath / outdoor hot springで混在します 用語表を1枚持ちます
訳したものを誰も読めません 中国語の案内が正しいか判断できず、そのまま掲載します 逆翻訳で意味だけ確認します

3つ目が一番厄介です。生成AIは日本語から中国語へ、それらしい文章を必ず返してきます。ただし宿の固有名詞、地名の読み、館内ルールのニュアンスは、平気で崩れます。「お風呂は22時まで」が「22時以降は入浴禁止です」という強い禁止表現になっていた例を見たことがあります。意味は同じでも、受け取る印象がまるで違います。

まず「訳す前の日本語」を1枚に集める

棚卸しする日本語の案内文

作業は翻訳から始めません。自社の案内文を、日本語のまま棚卸しするところから始めます。

集める対象はこのあたりです。

  • 予約確定メールの本文
  • 到着前の案内(アクセス、駐車場、チェックイン時刻)
  • 館内案内(風呂の時間、食事の場所、Wi-Fiパスワード)
  • よくある質問への回答(子ども連れ、アレルギー、送迎)
  • キャンセル規定

だいたい10〜15本になります。メールの送信済みフォルダとLINEの過去やり取りから拾えば、半日で揃います。ここを飛ばして「英語版を作って」とAIに頼むと、自社の実態と合わない一般的な旅館の案内文が返ってきます。

集めたら、固有名詞の一覧も作ります。宿名の英語表記、最寄り駅(大分駅/別府駅/由布院駅)、館内施設の呼び名、料理名。ここが揺れると、翻訳のたびに表記が変わります。

用語表を渡して、初めて翻訳を頼む

翻訳を頼むまでの手順

日本語の原文と用語表が揃ってから、生成AIに渡します。プロンプトは長くなりますが、一度作れば使い回せます。

あなたは日本の温泉宿の多言語案内を作る担当です。
以下の【日本語原文】を、英語・繁体字中国語・韓国語に翻訳してください。

【厳守する用語】
- 宿名: Yufuin Sanso(湯布院山荘)※すべての言語でこの英語表記を併記
- 最寄り駅: JR Yufuin Station(由布院駅)
- 露天風呂: open-air bath(英)/露天風呂(繁)/노천탕(韓)で統一
- 貸切風呂: private bath(英)— reserved bathとは訳さない

【翻訳の方針】
- 禁止・命令の強い表現を避け、案内としての丁寧さを保つ
  例:「22時まで」を「22時以降は禁止」と訳し替えない
- 日本固有のもの(浴衣、仲居、地獄蒸し)は原語ローマ字+短い説明を添える
- 1文が長い場合は2文に分ける。読み上げられる長さにする

【出力形式】
言語ごとに区切り、各文の下に「日本語に戻した意味」を1行添えてください。

【日本語原文】
(ここに原文を貼る)

最後の「日本語に戻した意味」が肝心です。中国語も韓国語も読めなくても、戻した日本語を見れば、意味がずれた箇所は分かります。ここで違和感があれば、その1文だけ訳し直させます。プロンプトの設計そのものについてはプロンプトの書き方入門の型が使えます。

あわせて読みたいプロンプトの書き方入門 — AIから良い回答を引き出す4つの型

クチコミ返信は、内容ごとに分岐を先に決める

クチコミ返信の型

多言語案内が固まったら、次はクチコミ返信です。ここは案内文と性質が違います。返信は毎回内容が異なるのに、書き手の判断は毎回同じという構造をしています。だからテンプレートではなく、分岐を作ります。

分岐は4つで足ります。

  1. 高評価・具体的な褒め — 褒められた点を1つ引用して返します
  2. 高評価だが要望あり — 感謝+要望への対応可否を明示します
  3. 低評価・設備の指摘 — 事実確認できたものだけ認め、改善予定を書きます
  4. 低評価・事実と異なる指摘 — 反論せず、経緯だけ淡々と書きます

4つ目の対応を先に決めておくことが、実務では一番効きます。腹が立った状態で書いた返信は、他の閲覧者にも伝わります。

以下のクチコミに対する返信案を作ってください。

【当館の方針】
- 返信は120〜180字。長い言い訳をしない
- 事実確認できていないことは認めない・否定もしない
- 改善予定は、実際に決まっているものだけ書く
- 署名は「湯布院山荘 支配人」

【分岐の判定】
まず、このクチコミが以下のどれに当たるか判定し、理由を1行で書いてから返信案を出してください。
(1)高評価・具体的な褒め (2)高評価だが要望あり
(3)低評価・設備の指摘 (4)低評価・事実と異なる指摘

【確認事項】
返信案の後に、「支配人が事実確認すべき点」を箇条書きで挙げてください。

【クチコミ本文】
(原文を貼る。外国語の場合は原文のまま貼る)

最後の「事実確認すべき点」を出させると、AIが勝手に事実を作っていないかが分かります。ここが空欄で返ってきたときほど、疑ったほうがいいです。生成AIが存在しないことを書いてしまう問題への対処は生成AIの契約書レビューで「存在しない条文」に騙されないでも触れていますが、考え方は同じです。

あわせて読みたい生成AIの契約書レビューで「存在しない条文」に騙されない — 中小企業が使える検証3ステップ

運用に乗せるとき、実際にどこで止まるか

仕組みを作ったあと、現場で止まるポイントがいくつかあります。

誰が最終確認するかを決めていません。 AIが下書きし、そのまま送信されると、いつか事故ります。宿泊費に関する返信、キャンセル規定に触れる返信は、必ず一人が目を通します。それ以外は担当者判断で送ってよい、という線を先に引きます。

用語表が更新されません。 新しいプランや施設が増えたとき、用語表に追記されないまま翻訳を頼むと、そこだけ訳語が揺れます。月に一度、更新日を決めておきます。

繁忙期に、元の手作業に戻ります。 これが一番多いです。10月の週末、フロントが立て込んでいるときに、プロンプトを開く余裕はありません。だからこそ、8月中に定型文の翻訳版を確定させ、「その場でAIに頼む」場面を減らしておきます。AIを使うのは、定型で対応できない案件だけにします。この「どこまで任せて、どこから人がやるか」の線引きはAIエージェントに任せていい業務、まだ人がやるべき業務の考え方が参考になります。

なお、こうした翻訳・予約管理まわりのツール導入には各種の補助金が使える場合があります。ただし対象経費も締切も年度ごとに変わるため、実際に使うときは大分県産業創造機構や市町村の商工担当窓口、公募要領で最新の条件を確認してください。

あわせて読みたいAIエージェントに任せていい業務、まだ人がやるべき業務 — 41人の部品商社が下期に引いた5本の線

えらびの道でお手伝いできること

えらびの道では、生成AIの業務活用について「研修」と「コーチング」の2軸で支援しています。研修は半日の単発と、標準コースがあり、今回の記事で扱った用語表の作り方や、翻訳結果を検証するプロンプトの組み立ては、実際の自社文書を持ち込んで手を動かす形で扱えます。コーチングでは、宿ごとの案内文の棚卸しから、クチコミ返信の分岐設計、誰が最終確認するかの運用ルールづくりまで、実務に伴走します。人材開発支援助成金や自治体の補助金の活用にも対応していますが、制度要件は年度ごとに変わるため、個別に窓口と確認しながら進めます。

多言語案内とクチコミ返信を仕組みにするまで、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。研修だけを専門にしている会社ではありません。普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしていて、生成AIはそこで毎日使っている道具のひとつです。お伝えするのは机上の知識ではなく、実際に手を動かしてきた範囲の話です。

研修では、汎用的な事例ではなく貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。予約確定メールや到着前の案内、館内案内といった手元の文面を持ち込んでいただき、用語表の作り方、翻訳を頼むプロンプト、クチコミ返信の分岐を、その場で組み立てていきます。翌日からそのまま使える形で持ち帰っていただくことを目指しています。

大分市の人材育成応援事業などの補助金を使う場合は、申請書類の作成もお手伝いします。要件の確認から書類の下書きまで相談できますので、「使えるかどうか分からない」段階でご連絡いただいて構いません。研修当日に立つのも、事前のヒアリングに伺うのも、代表の喜多が同じように担当します。

まずは現状をお聞かせください。オンラインで30分ほど、費用はかかりません。何から手をつけるべきか整理するだけでも、次の一手は見えてきます。

よくある質問

生成AIの翻訳は、旅行会社に頼むより品質が落ちませんか?

定型の案内文であれば、用語表を渡した上で逆翻訳による検証を挟めば実用に足ります。ただし契約書やキャンセル規定など、法的な効力が問われる文書は専門の翻訳者に依頼してください。判断基準は「間違ったときに金銭的な責任が生じるか」です。

クチコミ返信をAIに書かせていることは、お客様に伝わりませんか?

そのまま貼り付けると伝わります。宿名や具体的な出来事への言及がなく、当たり障りのない文章になるためです。AIには下書きまでを任せ、そのお客様固有の一文を人が足す運用にすれば、機械的な印象は残りません。

小規模な宿でも、多言語対応を仕組み化する意味はありますか?

むしろ人数が少ないほど効果があります。担当者が1人しかいない宿では、その人が休んだ瞬間に外国語対応が止まります。案内文を翻訳済みで保存しておけば、誰でも同じ品質で送れるようになり、属人化の解消につながります。

ご相談は、お電話が一番早いです

研修の内容・料金・補助金の使い方まで、その場でお答えします

097-507-3082

不在時は折り返しご連絡します

この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。

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