
AIの誤回答で客先に損害を出したとき、加入中の賠償責任保険は下りるのか — 秋の更改前に中小企業が確かめる、PL・サイバー・業務過誤の補償範囲にある4つの穴
この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。
見積回答の下書きを生成AIに任せていた会社で、単価の桁がひとつずれたまま客先へ出てしまいました。客先はその金額で段取りを組み、後から別手配になって追加費用が出ます。加入中の賠償責任保険で受けられるはずだと考えて代理店に電話したところ、「この形の損害は対象外かもしれません」と返ってきました。10月から11月は保険の更改が集中する時期ですので、証券を開く前に補償の構造を整理しておきます。
保険の入口は、AIの精度ではなく「損害の形」で分かれます
賠償責任保険は、AIが間違えたかどうかを見ていません。約款が見るのは、どんな損害が、どの原因で、誰の、どの業務から生じたかという4点です。AIの誤回答で起きる損害の多くは、人も傷つかず物も壊れない「金銭的な損失だけ」の形になります。これは純粋経済損失と呼ばれ、一般的な賠償責任保険は原則としてここを入口にしていません。
| 保険の種類 | 補償の入口になる損害 | AIの誤回答で外れやすい場合 |
|---|---|---|
| 生産物賠償責任保険(PL保険) | 引き渡した物や仕事の結果が身体や財物に与えた損害 | 金銭的な損失だけが生じた場合 |
| サイバー保険 | 不正アクセスや情報漏えいから生じた損害 | AIが正常に動いて誤った内容を出した場合 |
| 業務過誤賠償責任保険 | 約款の対象業務を行ううえでの過失から生じた損害 | 対象業務の外で助言や作成をした場合 |
請求する側の根拠は、民法の第415条(債務不履行)や第709条(不法行為)に置かれます。請求は成り立つのに保険の入口だけが違う、という状態が起こり得ます。なお補償の範囲や特約の名称は保険会社ごとに異なり、改定でも変わります。制度側の要件や数値も年度ごとに見直されますので、必ず貴社の保険証券と最新の約款で確認してください。
PL保険は、身体障害と財物損壊から外れた損害を拾いません
PL保険は、引き渡した製品や仕事の結果が原因で他人の身体を害したり他人の物を壊したりしたときに動きます。製造物責任法の第2条は、製造物を「製造又は加工された動産」と定めています。AIが出した文章や数値そのものは動産に当たらないと整理されるのが一般的ですので、誤回答が紙の上で止まっている限り、この枠には入りません。
ただし経路が物まで届けば話が変わります。AIが出した加工条件をそのまま設備に流して客先の材料を損じた場合は、財物損壊が生じています。AIブラウザに受発注画面を操作させた場合のように、AIの出力が実際の操作や工程につながっているかどうかを、業務ごとに書き出しておきます。
サイバー保険の「事故」は、侵入と漏えいから書かれています
サイバー保険の多くは、不正アクセス、マルウェア感染、情報漏えい、システムの停止といった事象を「事故」として定義しています。AIが設計どおりに動いたうえで誤った内容を出力した場合、侵入も漏えいも起きていませんので、事故の定義に届きません。精度の問題は、この保険が想定している原因ではないのです。
分かれ目は情報の流れ方にあります。従業員が顧客名簿をAIに貼り付けて社外に出してしまった場合は、情報漏えいとして拾える余地が出てきます。同じツールを使っていても、誤りが出たのか情報が出たのかで、開く証券が変わります。
業務過誤賠償は、約款の「対象業務」とやり直し費用で切られます
業務過誤賠償責任保険は、証券に列挙された対象業務の遂行に起因する賠償に限って支払われます。設計や施工管理は書いてあるのに、近年増えた導入支援や資料作成の受託が書かれていない、という食い違いが起こりがちです。AIを使って範囲外の助言まで踏み込んでいると、そこは補償の外になります。
もう一点は、自らの仕事をやり直す費用が免責とされている場合が多いことです。AIチャットが答えた納期で客先が発注したようなケースで実際に発生する費用は、多くが作り直しと再送付の手間です。損害賠償の形にならない費用は、保険ではなく自社の持ち出しになります。
免責条項と被保険者の範囲は、更改の席で確かめます
最後の穴は、補償対象の側ではなく免責条項の側にあります。確認するのは次の3点です。第一に、検証せずに送った行為が重過失と評価されないかという点です。第二に、客先との契約で通常より重い責任や違約金を約束していないかという点で、契約によって加重された賠償責任は免責とされるのが通例です。第三に、AIを操作しているのが業務委託先や派遣スタッフである場合に、その人が被保険者に入っているかという点です。
更改の面談は時間が限られますので、聞くことを紙にしてから臨みます。下書きはAIに作らせて構いませんが、可否の判断までさせないことが前提です。
# 役割
損害保険の補償範囲について、保険会社へ出す照会文の下書きを作ってください。
補償されるかどうかの判断はしないでください。
# 当社で起こり得る事象
- 事象: 見積回答をAIで下書きし、単価の桁を誤ったまま送付した
- 相手に生じた損害: 追加手配の費用(金銭的な損失のみ、物の損壊なし)
- 操作した者: 当社の従業員/一部は業務委託先
- 使用ツール: 社外のクラウド型生成AI(当社契約)
# 出力
1. 想定事故を1文で書いた記述
2. 証券で確かめたい条項の一覧(損害の定義/免責条項/被保険者の範囲/対象業務)
3. 代理店への質問文(各30字以内、5問まで)
えらびの道では、生成AIの業務活用を半日の単発研修と標準コースの研修、実業務に伴走するコーチングの2軸で提供しています。補償の確認をするには、どの業務でAIをどこまで使っているかを先に洗い出す必要がありますので、コーチングの中で業務ごとの利用実態と承認の置き方を整理し、代理店へ渡す照会文の形まで一緒に組み立てます。研修の費用には人材開発支援助成金や自治体の補助金を使える場合があり、制度ごとの条件はAI研修に使える助成金・補助金まとめに整理しています。補償が下りるかどうかの判断そのものは保険会社と代理店の領域ですので、当社は判断の材料を揃えるところまでを担当します。
保険の更改前に利用実態を洗い出すところから、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。研修だけを専門にしている会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしていて、生成AIもその現場で毎日使っている道具のひとつです。ですからお伝えするのは、一般論ではなく、自分たちで使って分かったことになります。
研修では、貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。この記事で扱った見積回答の下書きのように、どの業務でAIをどこまで使い、その出力を誰が確認して社外に出しているのかを、実物の帳票に沿って書き出します。代理店へ渡す照会文の下書きも、貴社の言葉に直しながらその場で組み立てられます。
ただ、補償が下りるかどうかの判断は保険会社と代理店の領域ですので、えらびの道が担当するのは判断の材料を揃えるところまでです。事前のヒアリングに伺うのも研修当日に立つのも代表の喜多本人ですから、うかがった貴社の事情がそのまま当日の題材になります。
更改の面談までに何を確かめておくか決めかねている段階でも構いません。まずはオンラインで30分ほど、今の使い方をお聞かせください。費用はかかりません。
よくある質問
AIの誤回答で取引先に損害が出た場合、サイバー保険は使えますか?
多くのサイバー保険は不正アクセスや情報漏えいを事故として定義していますので、AIが正常に動いたうえでの誤った出力は対象外になりやすいです。ただし従業員が顧客情報をAIに入力して外部に出た場合は、漏えいとして拾える余地があります。証券の事故の定義から確認してください。
AIが出した誤りはPL保険の対象になりますか?
PL保険は他人の身体を害したり物を壊したりしたときに動きますので、文章や数値が誤っていただけでは入口に届きません。一方、AIが出した条件をそのまま設備や工程に流して物を損じた場合は、財物損壊として検討の対象になります。物に届いたかどうかが分かれ目です。
保険会社にAIの利用を伝える必要はありますか?
告知や通知の要否は約款によって異なりますので、更改の際に業務の内容が変わった旨として相談されることをおすすめします。伝えないまま事故が起きると、対象業務の記載と実態がずれていることが後から判明し、支払いの協議が長引く原因になります。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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