
AIに書かせた商品説明に「業界No.1」と「最安」が入っていました — 年末商戦の販促物を出す前に、景品表示法で中小企業が足を取られる4つの表現と根拠資料の残し方
この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。
年末商戦向けのカタログとECの商品説明、あわせて40点の原稿を生成AIで一晩のうちに作りました。読み返すと、頼んでもいない「業界No.1の実績」「地域最安でご提供」という一文が、複数の原稿に入っています。AIは世の中に出回っている販促文の型を再現しただけで、貴社にその根拠があるかどうかまでは知りません。
困るのは、この一文を誰も止めないまま入稿日が来ることです。印刷に回した後で気付いても、刷り直すか、そのまま配るかの二択しか残りません。
判断の分かれ目は、表現の強さではなく資料の有無です
景品表示法が見ているのは、言い回しの派手さではありません。商品の内容を実際より良く見せる表示(優良誤認)と、取引条件を実際より有利に見せる表示(有利誤認)を禁じています。
効果や性能をうたう表示については、消費者庁から裏付けとなる資料の提出を求められることがあります。消費者庁の不実証広告規制の説明によれば、提出期限は原則として15日です。しかも提出した資料は、客観的に実証された内容であることと、表示された効果・性能と実証された内容が適切に対応していることの2つを満たす必要があります。
つまり判断軸は「その表現を書いてよいか」ではなく、「15日で出せる資料が今あるか」です。書いてから根拠を探す順番では、そもそも間に合いません。なお価格の有利さを言う表示はこの規制の対象ではありませんが、代わりに実際の販売実績そのものを確かめられます。
4つの表現を、出す場合と落とす場合に振り分けます
AIが生成した販促文に紛れ込みやすいのは、次の4つの型です。年末商戦の販促物を想定して、条件ごとに結論を並べます。
| 表現の型 | 出してよい場合 | 落とす場合 | 手元に残す資料 |
|---|---|---|---|
| 「業界No.1」「シェア1位」 | 第三者による調査があり、調査主体・時期・範囲を表示のそばに書ける場合 | 自社で設問を作ったイメージ調査しか手元にない場合 | 調査報告書の原本と、集計前の回答データ |
| 「最安」「どこよりも安い」 | 比較対象と確認日を限定し、値下げに気付いた日に直せる担当がいる場合 | 年末の値動きを毎日追う人を置けない場合 | 比較先の価格画面の保存と、取得日時の記録 |
| 「通常価格3万円→1万9,800円」 | 直近8週間の過半かつ通算2週間以上、その価格で売っていた場合 | セール直前に数日だけ高い値札を付けた場合 | 期間ごとの販売価格表と、受注明細 |
| 「満足度98%」「3日で改善」 | 調査条件と試験結果を原本で示せて、表示内容と対応している場合 | 数字の出どころがAIの生成文しかない場合 | 調査票・回収数の記録と、試験報告書 |
2列目に当てはまらない表現は、言い換えを探すより落とすほうが早く済みます。悩む時間のほうが原稿1本より高くつきます。
「No.1」は、調査の中身まで見られます
消費者庁のNo.1表示に関する実態調査報告書(令和6年9月26日公表)では、消費者1,000人への調査の結果、No.1表示のある商品について「競合他社の同種の商品より優れている」「実際の利用者への調査が行われている」と受け取る人が4割を超えていました。読み手は調査の存在を前提に読んでいるということです。
ここでの現実的な判断は、出すか落とすかの二択ではなく、言い切れる範囲まで狭めることです。「業界No.1」を落として「創業28年、県内142社に納入」と書けば、裏付けは納品伝票で足ります。範囲を狭めた事実のほうが、根拠を求められたときに強く、読み手にも具体的に届きます。
なお画像をAIで作る場合の権利の線引きはAIで作ったチラシ画像は商用利用できるかで別に整理しています。同じ販促物でも、画像は権利、文章は表示規制と、見る法律が変わります。
価格の表示は、入稿日に正しいだけでは足りません
消費者庁の二重価格表示の説明では、過去の販売価格を比較対照価格に使う場合、それが「最近相当期間にわたって販売されていた価格」である必要があるとされています。目安は、二重価格表示を行う時点からさかのぼった8週間のうち、その価格での販売期間が過半を占め、通算で2週間以上あることです。
カタログは11月に入稿して12月に配り、1月まで客先の手元に残ります。表示は出した瞬間だけでなく、読まれている間ずっと正しい必要があります。「最安」を書けるかどうかは、法的に絶対に無理という話ではなく、毎日比較先を確認する人を置けるかで分かれます。置けないなら落とす、これが人数の限られた会社の答えになります。
AIが対外向けに出した一文が、そのまま会社の表示として扱われる点はサイトのAIチャットが答えた納期で客先が発注しましたと同じ構造です。
根拠資料は、表示物ごとに1行で残します
景品表示法は事業者に表示の管理上の措置を求めています。難しい様式は要りません。表示物名・該当箇所・根拠資料の保管場所・確認者・確認日の5項目を、表示物ごとに1行で残すだけで十分です。
15日で出せる状態とは、資料が社内のどこにあるかまで分かっている状態です。「たしか営業部の誰かのPCにある」では出せません。
違反した場合は措置命令が出て、対象売上額によっては課徴金納付命令が加わります。消費者庁の説明のとおり課徴金は対象期間(最長3年)の売上額の3%で、算定額が150万円未満、つまり対象売上が5,000万円未満なら課されません。ただし措置命令は売上の大小に関係なく出ますし、中小企業に実際に効くのは、カタログの刷り直しと取引先への説明のほうです。
AIに書かせるなら、禁止語と根拠欄を先に渡します
順番を入れ替えるだけで、確認の手間はかなり減ります。生成の時点で禁止語を伝え、使った数字の出どころを書かせます。
あなたは当社の販促物の原稿を書きます。次の条件を必ず守ってください。
【禁止】
- 最上級表現(No.1、最安、業界初、日本一、最高、唯一)は使わない
- 効果の断定(必ず、確実に、◯日で改善)は使わない
- 数字は、私が渡した資料に書かれているものだけを使う
【出力形式】原稿ごとに次の3行を付ける
原稿:
使った数字:(出どころの資料名とページ)
資料が無い数字:(あれば列挙。無ければ「なし」)
すでに書き上がった原稿には、点検用を別に使います。可否の判定までAIにさせない書き方にしておくのが要点です。
次の販促原稿を、景品表示法の優良誤認・有利誤認の観点で点検してください。
1. 最上級・No.1・比較優位を示す語をすべて抜き出す
2. それぞれについて、裏付けに必要な資料の種類を書く
3. 資料が無い場合の書き換え案を、事実の記述として2案出す
適法かどうかの判定は行わず、抜き出しと書き換え案の提示までにとどめてください。
原稿:(ここに貼る)
えらびの道では、生成AIの業務活用を、半日の単発研修と標準コースの研修、そして実業務に伴走するコーチングの2軸でご提供しています。販促物のテーマでは、貴社の商品説明の原稿をそのまま題材にして、禁止語と根拠欄を組み込んだプロンプトの作成と、表示ごとの確認記録の様式づくりまでを一緒に進めます。費用面では人材開発支援助成金や自治体の補助金の活用にも対応しています。個別の表現が違反に当たるかどうかの判定は弁護士等の領域ですので、そこは切り分けた上で、社内で確認が回る仕組みの部分をお手伝いします。
販促原稿の振り分けまで、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。研修だけを専門にしている会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしていて、生成AIもその現場で毎日使っている道具のひとつです。自社サービスの告知文を書く側でもあるので、机上の知識ではなく、書いた文章に根拠を用意する立場からお話しできます。
研修では、貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。年末商戦のカタログ原稿やECの商品説明をお持ちいただければ、4つの表現の振り分けをその場で一緒に進められます。どこまで範囲を狭めれば手元の伝票で足りるのか、比較先の価格画面や販売価格表をどのフォルダに残すのか、翌日から同じ手順で回せる形にしてお渡しします。
事前のヒアリングに伺うのも研修当日に立つのも、代表の喜多が同じように担当します。大分市の人材育成応援事業などの補助金をお使いになる場合は、申請書類の作成もお手伝いしています。
入稿前の原稿を前に、この一文を出してよいか迷っている段階でも構いません。えらびの道では、オンラインで30分の相談をお受けしています。費用はかかりませんので、お気軽にお声がけください。
よくある質問
AIが書いた広告で景品表示法に違反した場合、責任は誰にありますか?
表示を行った事業者、つまり貴社が負います。生成AIが書いたことも、制作会社に任せたことも、免責の理由にはなりません。だからこそ、表示物ごとに誰が最終確認したかと、根拠資料がどこにあるかを記録として残しておくことが必要になります。
「当社調べ」と書けばNo.1表示は出せますか?
その一言を添えれば済むわけではありません。調査が客観的な方法で行われていて、表示している内容と調査結果が対応している必要があります。調査主体・時期・範囲を表示のそばに書けないのであれば、言い切れる範囲まで表現を狭めるほうが安全です。
根拠資料はどのくらいの期間保管すればよいですか?
表示を出している間はもちろん、掲載や配布が終わった後も残します。課徴金の対象となる期間は最長で3年さかのぼりますので、カタログやECの掲載終了後も数年単位で保管しておくと、後から問い合わせを受けたときに落ち着いて説明できます。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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