
利用者の名前が入ったままの介護記録をAIに貼っていました — 大分の介護事業所が秋の運営指導前に決める4つの線引き
この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。
訪問の記録をまとめ直して家族向けの報告文にする作業を、生成AIに任せている事業所が増えました。手が空かない夕方の30分が10分になりますので、現場から見れば当然の使い方です。ただ、貼り付けている元データを開くと、利用者の氏名・生年月日・要介護度・服薬の状況・その日の様子が、記録そのままの形で入っていることがあります。
秋は運営指導の通知が届く時期でもあります。ここで慌てて「AIの利用を全面禁止にします」と決めても、現場は隠れて使い続けますので、線を引き直すほうが現実的です。どこに線を引けばよいのかを、制度の側から整理します。
運営指導の確認項目に「生成AI」という欄はありません
厚生労働省の介護保険施設等運営指導マニュアルには、サービスごとの標準確認項目と標準確認文書が別添として付いています。そこに生成AIの利用を直接問う欄はありません。見られるのは、従業者の秘密保持、個人情報の利用についての同意、記録の整備といった、以前からある項目です。
つまりAIの利用は、新しい検査項目としてではなく、既存の項目の中で説明を求められます。「記録をどう扱っていますか」と聞かれたときに、AIに貼っている部分だけ答えが止まる状態が問題になります。
指定権者が県か市かで、事前提出書類も当日の進め方も変わります。大分市が指定する事業所は大分市の介護保険施設等運営指導のページを、県が指定する事業所は大分県の指定基準等の自己点検を先に開いてください。確認項目も様式も改正で入れ替わりますので、必ずその年度のものを使ってください。
介護記録は、同意の取り方が変わる情報を含んでいます
病歴や心身の機能の障害に関する情報は、通常の個人情報とは別の扱いになります。医療・介護の分野については、医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンスが、対象事業者や安全管理措置、委託先の監督についてまとめています。介護保険法に規定する居宅サービス事業や介護保険施設も対象に入っています。
生成AIについては、個人情報保護委員会が生成AIサービスの利用に関する注意喚起を出しています。個人情報を含むプロンプトを入力する場合、それが特定した利用目的の達成に必要な範囲かを確認すること、入力した内容が応答の生成以外の目的で扱われないかを確かめることが求められています。
ですので、論点は「AIに貼ってよいか、いけないか」ではありません。何のために・どのサービスに・どこまでの情報を渡しているかを、聞かれたときに答えられるかどうかです。
線は4か所に引きます — データ・事業者・人・記録
貴社で決めることを、根拠になる基準ごとに分けると次のようになります。
| 引く線 | 判断のもとになる基準 | 貴社が先に決めること | 運営指導のときに出せる控え |
|---|---|---|---|
| データの線 | 要配慮個人情報の取扱いに関する基準 | 記録のどの項目を外してから貼るかを決めること | 伏せる項目の一覧と、変換の手順を書いた控え |
| 事業者の線 | 委託先の監督に関する基準 | 使ってよいサービスと契約の種類を絞ること | 契約の種類と、学習に使わない設定を記した控え |
| 人の線 | 従業者の秘密保持に関する基準 | 貼ってよい職種と、承認が要る場面を決めること | 内規と、従業者から取った誓約書の控え |
| 記録の線 | 記録の整備に関する基準 | いつ誰がどの記録を使ったかの残し方を決めること | 利用ログと、出力物の保存先を書いた控え |
崩れやすいのは2行目です。職員が個人のアカウントで無料版を使っている場合、事業所として設定を確かめようがありませんので、控えを出せません。法人契約に寄せるか、使ってよいサービスを絞るかの判断が先になります。
名前を伏せても、項目の組み合わせで元に戻ってしまいます
氏名を伏せただけで安心してしまう例が多く見られます。ところが小規模な事業所ほど利用者の母数が小さく、「88歳・独居・住所は町名まで・週2回の入浴介助」の4項目だけで1人に絞り込めてしまいます。イニシャルへの置き換えも危険です。同じ記録の中で繰り返し出てきますので、他の情報と突き合わせれば戻せます。
仮IDと対応表を事業所内で紙のまま持ち、AIに渡すのは仮IDのほうにする運用が現実的です。伏せ忘れが最も多いのは自由記述の特記事項で、本文中に家族の名前や近隣の施設名が混ざります。
様式の側を先に点検するときは、実際の記載内容ではなく項目名だけを渡します。
あなたは介護事業所の記録様式を点検する担当者です。
当事業所の訪問介護記録の「項目名」だけを下に貼ります。実際の記載内容は含めていません。
【項目名】
利用者氏名/利用者ID/生年月日/要介護度/住所(町名まで)/サービス提供日/
サービス提供時間/担当ヘルパー名/バイタル(体温・血圧・脈拍)/服薬の状況/
排泄・食事・入浴の状況/特記事項(自由記述)/家族への連絡内容
【出力】
1. 生成AIに渡す前に伏せるべき項目と、その理由
2. 伏せても、他の項目の組み合わせで個人が絞り込めてしまう組み合わせ
3. 自由記述欄に混ざりやすく、伏せ忘れが起きやすい情報の例
4. 伏せた状態でも要約の質を保つために、代わりに置く記号や区分の案
※ 実際の記録内容は貼りません。様式の設計だけを検討してください。
秋までに、紙で出せる形に直しておきます
口頭の申し送りだけでは、指導の場で示せません。内規、掲示している利用目的との整合、利用ログの3点を紙にします。内規の作り方そのものは社内ガイドライン策定の5ステップにまとめていますが、介護事業所の場合は、掲示している個人情報の利用目的とAIの使い方がずれていないかを合わせて見てください。
ログは「取っている」ことより「開いている」ことが問われます。利用ログを11か月開いていなかった事例のように、記録だけが溜まっている状態は珍しくありません。居宅介護支援事業所や委託元から「生成AIをどう使っていますか」と書面で聞かれる場面も出てきていますので、AI利用確認書で問われる項目の形で答えを用意しておくと、そのまま運営指導にも使えます。
内規の草案は、貴社の事情を前提に置いて作らせます。
あなたは介護事業所の管理者です。
生成AIの業務利用について、運営指導で示せる内規の草案を作ってください。
【前提】
- 通所介護1事業所、職員18名(介護職12名・看護職2名・事務2名・管理者・生活相談員)
- 使いたい業務: 記録の要約、家族向け報告文の下書き、研修資料の作成、行事案内の作成
- 使わせたくない業務: サービス提供票の作成、アセスメントの判断、事故報告書の事実認定
- 利用者情報は仮IDに置き換えてから貼る運用を前提とする
【出力】
1. 使ってよい業務と禁止する業務の一覧(境目が分かる書き方で)
2. 伏せる情報の定義と、伏せ忘れを見つける確認の担当
3. 出力を記録として残すときの承認者と保存先
4. 職員から取る誓約書に入れる文
5. 年に1回見直すときに見る箇所
※ 法令の解釈は断定せず、確認が要る箇所には「要確認」と印を付けてください。
記録の保存年限や確認文書の範囲は、基準省令の改正や自治体の条例で変わります。数値を社内文書に書き写すときは、必ず指定権者が出している最新の要領で確かめてください。
えらびの道では、半日の単発研修から標準コースまで、生成AIの業務活用研修を提供しています。実業務に伴走して定着させるコーチングも用意しています。介護事業所では、記録様式のどの項目を伏せるかの一覧づくり、仮IDと対応表の持ち方、内規と誓約書の文面、利用ログの残し方までを、貴社が実際に使っている記録様式を題材にして一緒に整えます。人材開発支援助成金や自治体の補助金を使う場合も対応していますが、支給の可否や法令の解釈を判断する立場ではありませんので、確認は労働局や指定権者と進めていただく前提でお手伝いします。
秋の運営指導までに線を引くところを、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。研修専門の会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしていて、生成AIもその現場で毎日使っている道具のひとつです。個人情報を含むデータをどこまで外部に渡すかは、私たち自身が日々判断していることでもあります。
研修では、貴社が実際にお使いの記録様式をそのまま題材にします。訪問記録の要約や家族向け報告文の下書きを持ち込んでいただければ、どの項目を伏せてから貼るか、仮IDと対応表をどこに置くかを一緒に決め、運営指導で示せる内規の形にして持ち帰っていただけます。
大分市の人材育成応援事業などの制度をお使いになる場合は、申請書類の作成もお手伝いします。事前のヒアリングに伺うのも研修当日に立つのも代表の喜多本人ですので、伺った事情がそのまま当日の題材になります。
線の引き方が決まっていない段階でも構いません。いまの使い方をお聞かせいただければ、どこから手を付けるとよさそうかをえらびの道で一緒に整理します。オンラインで30分ほど、費用はかかりません。
よくある質問
介護記録を生成AIに貼るのは違法ですか?
貼ること自体を一律に禁じる規定はありませんが、要配慮個人情報を含む記録を、特定した利用目的の範囲を超えて渡すと問題になります。入力内容が応答の生成以外に使われない契約と設定になっているかを確かめたうえで、伏せる項目を決めてから使ってください。
利用者の名前を伏せれば、介護記録をAIに貼っても問題ありませんか?
氏名だけでは足りません。年齢・住所の町名・要介護度・利用曜日といった項目の組み合わせで、小規模な事業所ほど個人が絞り込めてしまいます。仮IDと対応表を事業所内に残す形にして、自由記述欄の伏せ忘れを確認する担当まで決めておいてください。
運営指導で生成AIの使い方を聞かれることはありますか?
標準確認項目に生成AIという欄はありませんが、秘密保持や個人情報の利用同意、記録の整備を確認する中で説明を求められます。内規と利用ログ、契約の控えを紙で出せるようにしておくと答えが揃います。確認項目は年度ごとに変わりますので最新の要領で確かめてください。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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