
「AIで年間1,200時間削減」と報告が上がったのに残業が減っていません — 上期末に数え直す4つの数字と、助成金が見ている労働生産性の定義
この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。
上期末の振り返りで、「AIの導入で年間1,200時間を削減できました」という報告が上がってくることがあります。ところが同じ会議で配られる勤怠の集計を見ると、9月の時間外労働の合計は4月とほとんど変わらず、人員も増減していません。報告が嘘だというわけではありません。社内で数えている数字と、制度が求める数字が、そもそも別のものだからです。
助成金や補助金の様式には、「削減時間」を書く欄がほとんどありません。人材開発支援助成金にも、訓練の修了後に賃金を引き上げた場合などに助成率が上乗せされる区分がありますが(厚生労働省の人材開発支援助成金のページ)、そこで見られるのは削減時間ではなく賃金の額です。要件も率も年度ごとに見直されますので、数字を作り始める前に、その年度の要領で定義を確かめてください。
「削減時間」を書く欄は、どの様式にもありません
| 上期末の報告に出てくる表現 | 社内で数えている数字 | 制度の様式が求める数字 |
|---|---|---|
| 年間1,200時間の削減 | 1件あたりの短縮分に件数を掛けた見込みの数字 | 出勤簿と賃金台帳に残る実績の労働時間の数字 |
| 人件費で換算して◯◯万円 | 平均時給に削減時間を掛けた換算の数字 | 決算書に人件費として計上された実額の数字 |
| 1人あたり月◯時間の余裕 | 現場の体感を平均した数字 | 労働者数と年間就業時間から出す労働投入量の数字 |
| 生産性が上がった | 定義を置かないまま使われた印象の数字 | 制度ごとに算式が定められた労働生産性の数字 |
左の列と右の列は、対応しているようで一度も交わりません。上期末に説明が止まるのは、この左側だけで半年を走ったときです。
制度が見ているのは、時間ではなく付加価値額と労働投入量です
制度によって算式は違いますが、多くは「付加価値額 ÷ 労働投入量」の形をとります。付加価値額に営業利益・人件費・減価償却費を含める定義が使われることがあり、この場合は残業代を減らすと分子も一緒に下がります。残業を削っただけでは数字が伸びない仕組みになっているのです。分母も、労働者数だけで置く定義と、労働者数に1人あたり年間就業時間を掛ける定義があります。前者であれば、時間をいくら削っても分母は動きません。
どの算式を使うかは、その制度の公募要領や支給要領に書かれています。基準となる年度も比較の期間も制度ごとに違い、年度ごとに見直されますので、社内の数字を作る前に定義の側を先に確定させてください。定義を後から合わせに行くと、売上や在庫の定義を決めずに着地見込みを出したときと同じで、数字が二度手間になります。
上期末に数え直す4つの数字
| 数え直す数字 | 数字を取り出す書類 | 数え直すと出てくるずれ |
|---|---|---|
| 実際の総労働時間 | 出勤簿と勤怠の月次集計表 | 削減したはずの部署で時間外が減っていないずれ |
| 実際に支払った時間外手当 | 賃金台帳と月次の試算表 | 時間は減っても手当の総額が動いていないずれ |
| 付加価値額 | 損益計算書(営業利益・人件費・減価償却費) | 売上も外注費も動かず分子が変わっていないずれ |
| 労働投入量 | 従業員名簿と所定労働時間の一覧 | 人員も所定時間も上期の初めと同じであるずれ |
賃金台帳には労働時間数や時間外労働の時間数を記入することが定められています(労働基準法)ので、1つ目と2つ目は新たに集計を作らなくても手元にあります。4つとも動いていない場合、浮いた時間は別の業務に吸収されたと考えるのが自然です。それ自体は失敗ではありませんが、制度の欄には「変化なし」としか書けません。
「減らした時間」ではなく「振り替えた先」を書き残します
報告値をそのまま持ち込まず、根拠が追える形に分解します。
あなたは社内の業務改善の効果を検証する立場です。
以下の報告を、根拠が追える形に分解してください。
【報告された内容】
・対象業務: 見積書と請求書の作成、問い合わせメールの一次返信
・報告値: 年間1,200時間の削減
・対象部署: 営業2課と業務課(計11名)
【出力】
1. 報告値を「1件あたりの短縮分 × 件数 × 頻度」に分解した内訳の表
2. 各項目について、実績で確かめられる書類の候補(勤怠、受注台帳など)
3. 見込みのまま置かれ、実績で裏づけられていない箇所の指摘
4. 浮いた時間の振替先を確かめるための質問を5つ
※ 効果の是非は判断しないでください。分解と不足の指摘に留めてください。
4番目の出力が下期の材料になります。見積の返信までの日数、内製に戻した外注の金額、増えた訪問件数といった振替先は、付加価値額の側に現れる可能性があります。時間の行き先を記録していない会社ほど、利用が一部の人に偏っていないかの確認も同時に必要になります。
数字を作り直すとき、AIに任せてよい範囲
以下のAとBを突き合わせて、書き足りない数字を挙げてください。
【A: 社内の上期報告に載っている数字(そのまま貼る)】
【B: 提出先の様式の項目と定義(公募要領・支給要領から転記して貼る)】
【出力】
1. Bの各項目に対して、Aのどの数字が使えるか/使えないか
2. 使えない理由(定義が違う、出どころの書類がない、期間が合わない)
3. 期限までに用意すべき書類と、社内の担当部署の候補
※ 支給や採択の可否、助成率の当てはめは判断しないでください。
突き合わせと不足の指摘までがAIの守備範囲です。助成率や算式の当てはめを尋ねると、それらしい数字が返ってきますが、年度をまたいだ古い要件のまま答えていることがあります。最終的な数値は自分で検算し、可否は窓口で確認してください。投資回収の考え方そのものはAI研修の費用相場と投資回収にも整理しています。
えらびの道では、半日の単発研修から標準コースまで、生成AIの業務活用研修を提供しています。研修とあわせて、実業務に伴走しながら定着まで見るコーチングも用意しています。上期の報告値を分解して振替先を記録に残す作業や、提出先の定義に合わせて社内の数字を並べ直す作業は、貴社の実際の報告書と勤怠データを題材にして一緒に進められます。人材開発支援助成金や自治体の補助金を使う場合も、支給や採択を保証することはできませんので、要件の判断は労働局や専門家との確認を前提に、実務の段取りをお手伝いする立場をとっています。
提出用の数字を作り直すところまで、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。研修専門の会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしていて、生成AIもそこで毎日使っている道具のひとつです。机上の知識ではなく、実務で使ってきた範囲でお伝えします。
研修では、貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。この記事で扱った上期末の報告値の分解、勤怠と賃金台帳からの数字の取り出し、浮いた時間の振替先を書き残す様式づくりを、貴社の部署に合わせて進めます。汎用的なひな形ではなく、翌日から使える形で持ち帰っていただきます。
大分市の人材育成応援事業などの制度を使う場合は、申請書類の作成もお手伝いします。支給や採択の可否を判断する立場ではありませんので、算式や要件の確認は管轄の労働局や社会保険労務士と進めていただく前提で、社内の数字を並べ直す側を整えます。事前のヒアリングに伺うのも当日に立つのも代表の喜多です。
下期の数字を決めかねている段階でも構いません。えらびの道では、オンラインで30分ほどのご相談を承っています。費用はかかりませんので、いま手元にある報告値と、気がかりな点をそのままお聞かせください。
よくある質問
AIの導入効果を「削減時間」で報告してはいけないのですか?
社内で共有する分には有効な数字です。ただし助成金や補助金の様式には削減時間を書く欄がほとんどなく、賃金台帳や決算書から出る数字での説明を求められます。同じ根拠から社内用と提出用の二通りを出せるようにしておくと、期末に作り直さずに済みます。
残業も人員も減っていない場合、AIを入れた意味はなかったのでしょうか?
浮いた時間が別の業務に回っていれば、受注件数や納期、外注費のいずれかに現れているはずです。その行き先を記録していれば説明が立ちます。削減時間だけを掲げて振替先を残していないと、上期末に効果を示す手立てがなくなります。
労働生産性の計算をAIに任せてもよいですか?
算式の構造を整理させたり、必要な書類を洗い出させたりする使い方は有効です。ただし当てはめる数値と定義は年度ごとに見直される要領によりますので、最終的な数字はご自身で検算し、要件に当たるかどうかは提出先の窓口で確認してください。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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