
税理士・社労士に聞く前にChatGPTに聞いてしまう — 中小企業の税務・労務相談で、AIの答えが危なくなる4つの場面
「これ、経費で落ちますか」「この残業代の計算で合っていますか」——顧問税理士や社労士に電話する前に、まずChatGPTに聞いてみる。この順番はもう珍しくありません。すぐ答えが返り、聞き返されず、こちらが遠慮する必要もないからです。問題は、AIの答えが「一般論としては正しいけれど、自社では違う」ことがある点です。実際に危なくなる場面は、次の4つに集中します。
「うちの場合、経費で落ちますか」——AIは前提を聞き返しません
顧問であれば「その車の業務利用割合は」「去年の申告ではどう処理しましたか」と必ず聞き返します。AIは聞き返しません。手元にある情報だけで、最もありそうな一般論を返します。業種の慣行も、過去の申告方針も、税務調査で指摘された経緯も知らないまま言い切るので、読んだ側は「確認が済んだ」と感じてしまいます。
防ぎ方は単純で、AIには結論ではなく論点を出させます。
以下について、税理士に確認するための「論点リスト」を作ってください。
結論は書かず、判断が分かれる点と、私が事前に用意すべき資料だけを挙げてください。
・状況: 中古の営業車を購入。社長と営業担当2名が使用し、私用も一部あります
・知りたいこと: 減価償却の方法と、私用分の扱い
このリストを持って電話すると、相談時間はむしろ短くなります。AIは顧問の代わりではなく、顧問に聞く前の準備係として置くと外れません。
AIが書いた就業規則の条文を、そのまま届け出てしまいます
生成AIは、条文らしい文章を作るのがとても得意です。ただし条番号や改正の反映は当てになりません。学習時点より後の改正は反映されませんし、それらしい条番号を添えてしまうこともあります。同じ現象は契約書でも起きていて、生成AIの契約書レビューで「存在しない条文」に騙されないで触れたとおりです。
AIが出した条文は下書きとして扱い、根拠として挙がった条番号はe-Gov法令検索の労働基準法で原文に当たります。そのうえで、届け出る前に社労士のチェックを通します。「AIに下書きさせたので見てください」と正直に伝えたほうが、確認は早く終わります。
保険料や割増賃金の金額まで、AIに計算させてしまいます
言語モデルは料率表を持っていません。健康保険料率は都道府県ごとに異なり毎年改定されますし(全国健康保険協会の都道府県毎の保険料率)、雇用保険料率も年度ごとに見直されます(厚生労働省が示す年度ごとの雇用保険料率)。古い料率のまま、桁の揃った計算過程を見せられると、正しく見えてしまうところが厄介です。
金額の確定はAIにさせません。任せるのは計算式の組み立てと、抜けている項目の洗い出しまでにして、料率は公式サイトの表から手で入れます。試算をまとめるときも同じで、最低賃金の引き上げに備える人件費シミュレーションのように数値の出どころを分けておくと、後から検算できます。
相談を具体的にしたくて、社員の氏名や診断名をそのまま貼ってしまいます
労務の相談は、具体的でないと答えが返ってきません。そこで休職の相談に診断書の文面を、賃金の相談に給与明細を、そのまま貼り付けてしまいます。悪意ではなく、良い答えが欲しいからこそ起きます。貼る前に置き換えれば、精度はほとんど落ちません。
以下の相談について、社労士に確認すべき点を整理してください。
・対象者: 製造部門のA氏(勤続8年・正社員)
・状況: 私傷病により4月から欠勤が続いています(診断名は伏せます)
・知りたいこと: 休職に切り替える場合の社内手続きと、確認すべき就業規則の条項
※実名・診断名・給与額は伏せた前提で回答してください
契約プランやアカウント設定によっては、入力内容が学習に使われる場合があります。設定の確認と社内ルールの作り方は生成AIを安全に使うためににまとめています。
4つの線を、紙一枚に書き出しておきます
境目は人によって解釈が揺れるので、言葉にして配ってしまうのが早い方法です。
| 相談の種類 | AIに任せてよい部分 | 顧問に確認する部分 |
|---|---|---|
| 経費・勘定科目 | 制度の一般論と論点を整理する部分 | 自社の取引実態に当てはめて可否を決める部分 |
| 就業規則・雇用契約書 | たたき台の文言を起こす部分 | 法令適合と自社運用との整合を確かめる部分 |
| 保険料・割増賃金 | 計算式と必要項目を洗い出す部分 | 料率を当てて金額を確定する部分 |
| 助成金・補助金の要件 | 公募要領を読み解いて要点をまとめる部分 | 自社が該当するかを判定する部分 |
| 従業員個別の事情 | 匿名化した一般ケースとして聞く部分 | 実名・実データを扱って対応を決める部分 |
えらびの道では、生成AIの業務活用を研修(半日の単発/標準コース)とコーチング(実業務に伴走して定着させる)の2軸で提供しています。税務・労務でAIをどこまで使うかは、この表のような形で言語化しておかないと、結局は現場の判断任せになります。研修では「AIに聞いてよい範囲」の切り分けと、顧問に渡す論点リストの作り方を扱い、コーチングでは実際の相談メールや就業規則の下書きを題材に、そのまま使える形まで一緒に整えます。人材開発支援助成金や自治体の補助金の活用にも対応しています。
顧問に渡す前の整理から、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。ただ、研修専門の会社ではありません。普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしていて、生成AIはそこで毎日使っている道具のひとつです。お伝えするのは、資料で読んだ話ではなく、実際に手を動かして分かったことです。
研修では、貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。税務・労務であれば、経費の可否を税理士に確認するための論点リストの作り方、就業規則のたたき台をAIに書かせてから条番号を原文で確かめる手順、保険料や割増賃金で計算式と料率の担当を分ける進め方を、貴社の帳票や規程で確かめます。汎用的な事例ではなく、翌日から同じ手順で使える形で持ち帰っていただきます。
社員の氏名や診断名のように、そもそもAIに入力してよいか迷う情報もあります。何を伏せて何を残すか、社内でどこまでを共通ルールにするかは、業務の流れを聞かせていただいたうえで一緒に決めていきます。事前のヒアリングに伺うのも、研修当日に立つのも同じ人間(代表の喜多)ですので、こうした込み入った話が引き継ぎで薄まりません。大分市の人材育成応援事業などを使う場合は、申請書類の作成もお手伝いします。
えらびの道では、初回のご相談をオンラインで30分ほど承っています。費用はかかりませんので、顧問に聞くべき境目をどう決めるか迷っている段階でもお声がけください。
よくある質問
顧問税理士に聞く前にChatGPTで調べるのは問題ないですか?
調べること自体は問題ありません。制度の概要をつかみ、質問を整理する用途であれば、双方の時間の節約になります。ただし出てきた結論を自社の処理として確定させず、判断は顧問に確認してください。論点を整理してから相談すると、やり取りは短く済みます。
就業規則の作成を生成AIに任せてもいいですか?
たたき台を作るところまでは任せられます。一方で条番号や改正の反映は当てにならないため、原文と突き合わせる作業が必ず必要になります。労働基準監督署へ届け出る前に社会保険労務士のチェックを通す前提で、下書きの道具として使ってください。
AIに社員の氏名や給与額を入力しても大丈夫ですか?
氏名や診断名などの個人情報は、入力しないことをおすすめします。A氏、製造部門、私傷病といった形に置き換えれば、相談の精度はほとんど落ちません。入力内容が学習に使われる設定になっていないかも、あわせて社内で確認しておいてください。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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