ストレスチェックの自由記述を生成AIに要約させたら、誰が書いたか分かってしまいました — 秋の実施前に中小企業が引く、集団分析と個人結果の線引き4点

ストレスチェック労務管理生成AI活用

この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。

10月にストレスチェックを実施する会社から、こんな相談をいただきます。自由記述欄に集まった120件のコメントを生成AIに要約させ、「職場環境の課題」としてA4で3枚にまとめました。ところが読んだ部長が、そのうちの一節を指して「これは製造2課のBさんだね」と言いました。要約に氏名は入っていません。部署名も入れていません。それでも当たっていました。

漏れたのは氏名ではなく、状況です。「4月に異動してきてから」「班が自分を入れて3人なので」といった一文は、要約しても消えません。要約とは、共通する話をまとめて、他と違う話を残す作業だからです。特徴が残るほど、書き手は絞られます。

ストレスチェックは、個人ごとの結果と集団ごとの分析で扱いがまったく違います。生成AIを使ってよいかどうかは、ツールの選定ではなく、この2つのどこに線を引くかで決まります。秋の実施前に、次の4点を決めてください。

匿名だったのは、AIに貼り付ける前までです

人数で決まる義務と特定

労働安全衛生法第66条の10では、検査の結果は実施者から本人に通知され、事業者は本人の同意がなければ受け取れません。常時50人以上の労働者を使用する事業場には実施義務があり、50人未満の事業場は当分の間、努力義務とされています。

自由記述欄そのものは法定の項目ではなく、多くの会社が独自に足しているものです。ただし調査票の一部として実施者が集めているなら、点数と同じ箱に入ります。「法定項目ではないから人事で先に読んでよい」とはなりません。

そして匿名かどうかは、氏名の有無では決まりません。他の情報と照らし合わせて誰か分かるなら、匿名ではありません。20人の部署で「時短勤務なので」と書けば、それだけで1人か2人に絞られます。介護記録に利用者名が残ったままAIに貼ってしまう問題と同じで、危ないのは固有名詞よりも、組み合わせると1人に届く条件のほうです。

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貼り付けてよいのは集計値までで、自由記述の原文は条件で分かれます

AIに渡せる情報の線引き

判断の中心はこの表です。

手元にある情報 AIに要約させてよい場合 AIに要約させてはいけない場合
個人ごとの点数と回答 該当する場合はありません 同意の有無にかかわらず、事業者側で扱うすべての場合
自由記述の原文 実施者と実施事務従事者だけが、入力内容を学習に使わない契約の環境で扱う場合 人事担当者が手元のアカウントに貼る場合
集団ごとの集計値 部署名を伏せ、数値と全体の傾向だけを渡す場合 数人規模の単位まで割れたまま渡す場合
実施者がまとめた集団分析のコメント 個人が特定されない形に整えたうえで渡す場合 原文の言い回しがそのまま残っている場合

事業者側で回すなら、渡すのは数値だけになります。

以下は、ストレスチェックの集団分析結果から取り出した数値です。
個人の回答と自由記述は含めていません。

対象:製造部門(対象者48名・受検45名)
総合健康リスク:全国平均を100として118
仕事の量的負担:全国平均より高い
上司の支援:全国平均より低い

この数値から読み取れる職場環境の課題を3点に絞り、
それぞれについて職場単位で実行できる対策を2つずつ挙げてください。
数値に書かれていない事実を推測で補わないでください。

このプロンプトには、原文が1文字も入っていません。ここが線になります。

誰のアカウントで動かすかによって、同じ操作の可否が入れ替わります

労働安全衛生規則の第52条の10第2項では、検査を受ける労働者について解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事できないと定められています。人事課長が自由記述を自分のアカウントに貼る行為は、AIの安全性を確かめる以前に、この点で止まります。

実施者である産業医や保健師、人事権を持たない実施事務従事者が扱うなら、次は環境の話になります。入力内容が学習に使われない契約か、ログが誰のIDで残るか、退職時にアカウントを閉じられるか。共有アカウントで運用していると、あとから「誰が投入したか」を追えません。Copilotで他部署の給与表が見えてしまった会社の権限棚卸しと同じ構図です。

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何人の塊にしてから渡すかは、組織図の切り方で決まります

集団の単位を決める順

集団分析の単位について、労働安全衛生規則は人数を定めていません。何人未満なら出さないかは、貴社が実施者と決める数字になります。

組織図をそのまま単位にすると、3人の班や6人の課が並びます。この粒度で数値を出すと、平均値ひとつで個人の点数が推測できます。束ね直す方向は3つあります。部門単位に上げる、職種で横に切る、勤続年数の帯で切る。ただし全社1つに束ねてしまうと、対策の打ちようがない結果になります。

決め方は「小さい単位を後から消す」ではなく、「最小人数を先に決めて、それを下回った集団は上位に合算する」です。実施前に決めておけば、結果が出てから部署名を伏せて回す作業が発生しません。

出てきた要約は、配る先によって粒度が変わります

配る前に確かめる点

配る先 そのまま配ってよい場合 手を入れてから配る場合
実施者・産業保健スタッフ すべての場合 該当する場合はありません
衛生委員会 数値と全体の傾向にとどめる場合 部署名と自由記述の要約が入っている場合
役員会・部長会 部門単位の数値にとどめる場合 課や班の単位まで割れている場合
全社への公開 会社全体の数値と対策だけにする場合 個別の記述に由来する表現が残っている場合

配る前の点検も、AIに任せられます。ただし、この点検を回すのは実施者側です。

以下の文について、次の3点だけを判定してください。要約はしないでください。

1. 勤務形態・雇用区分・勤続年数・時期など、
   人を絞り込める条件がいくつ含まれているか
2. その条件をすべて満たす人が、対象集団のなかで何人になりそうか
3. 1人か2人に絞られる場合、どの語を削れば絞り込めなくなるか

対象集団:製造部門45名(うち時短勤務3名、夜勤専従4名)
文:(ここに要約案の一文を貼ります)

えらびの道では、生成AIの業務活用を半日の単発研修と標準コースで扱い、実務に伴走して定着させるコーチングも用意しています。ストレスチェックのように、扱ってよい情報と扱えない情報が法令で分かれている業務では、貴社が実際に使っている調査票と集団分析の様式を題材に、投入してよいデータの範囲とプロンプトの型を一緒に決めるところまでを研修の中で行います。人材開発支援助成金や自治体の補助金の活用にも対応しており、AI研修に使える助成金・補助金の要件に合わせて日程と時間数を組みます。実施者や産業保健スタッフとの取り決めが必要な部分は、決めるべき項目の一覧としてお渡しします。

集団分析を職場改善につなげるところまで、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。研修だけを専門にしている会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしており、生成AIはその現場で毎日使っている道具のひとつです。どのデータをどこまで機械に渡してよいかという線引きは、私たち自身が日々の開発で判断していることでもあります。

研修では、貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。この記事で扱ったストレスチェックであれば、貴社の調査票と集団分析の様式を開いたうえで、自由記述の原文をどの立場の人が扱うか、集団分析の数値をどの単位まで束ねて渡すか、要約案を配る前にどう点検するかを、その場で決めていきます。数値だけを渡すプロンプトと配布前の点検手順を、翌日から使える形で持ち帰っていただけます。

研修に補助金を使う場合も、大分市の人材育成応援事業などであれば、申請書類の作成からお手伝いできます。事前のヒアリングに伺うのも当日に研修を行うのも同じ人間(代表の喜多)ですので、実施者や産業保健スタッフとの取り決めについて先に伺った事情が、そのまま当日の題材になります。

10月の実施までに何から決めればよいか整理がついていない段階でも構いません。えらびの道までお声がけください。オンラインで30分ほど、費用はかかりません。

よくある質問

ストレスチェックの自由記述を生成AIで要約してもよいですか?

事業者側で原文を要約させることはできません。自由記述は個人の結果と同じ扱いになり、本人の同意なく事業者が取得できないためです。要約が必要な場合は、実施者または人事権を持たない実施事務従事者が、入力内容を学習に使わない契約の環境で行います。

集団分析の結果なら、そのまま生成AIに渡してよいですか?

数値と全体の傾向だけであれば渡せます。ただし部署名が入っていたり、数人規模の単位まで割れていたりすると、平均値から個人が推測できます。渡す前に、最小人数を下回る集団を上位に合算し、部署名を記号に置き換えてください。

人事担当者がストレスチェックの結果を見てはいけないのですか?

労働安全衛生規則では、解雇や昇進、異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事できないと定められています。集団分析の結果を職場改善に使うことは問題ありませんが、個人の結果や自由記述の原文を人事側で開く運用は避けてください。

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この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。

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