
9月末で年720時間の半分を使い切っていました — 36協定の折り返しを生成AIで点検する中小企業が、勤怠データを渡す前に間違える4つの数え方
この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。
「上期の36協定の消化状況を出してほしい」と総務に頼んだところ、勤怠のExcelを生成AIに貼り付けて集計させ、「9月末で年720時間のうち368時間、もう半分を超えました」という報告が返ってきました。ところが元データを見直すと、休日出勤の時間が時間外に足し込まれていて、実際の時間外労働は290時間台でした。逆に、単月100時間未満の判定では足すべき休日労働が抜けていて、危ない月を1つ見落としていました。
集計そのものは生成AIが得意な作業です。間違いは集計ではなく、渡す前の定義で起きます。下期の協定運用を決める前に、次の4点をどちらで数えるかを先に決めてください。
「折り返し」の起点は、4月とは限りません
上限規制の「1年」は暦年でも年度でもなく、36協定で定めた対象期間の初日から1年です。36協定届(特別条項)の記載例にも起算日の欄があり、そこに書いた日が分母の起点になります。
4月起算なら9月末が折り返しです。10月起算なら9月末は着地であって、点検ではなく締めの月です。1月起算なら9か月が過ぎており、残り3か月で使える時間はすでにわずかです。生成AIは何も指定しなければ「上期=4〜9月」と解釈しますので、プロンプトに起算日を書かないかぎり、この時点で分母がずれます。
休日労働を足すかどうかで、同じ月が38時間にも54時間にもなります
厚生労働省の「時間外労働の上限規制」では、上限ごとに数える範囲が違います。年720時間は時間外労働だけで数え、休日労働は入りません。一方、単月100時間未満と複数月平均80時間以内は、休日労働を足して判定します。
9月の時間外が38時間、法定休日の出勤が2日で16時間だった場合、45時間の限度時間に対しては38時間、100時間未満の判定に対しては54時間になります。したがって勤怠データは合計1列ではなく、時間外と休日労働を分けた2列で渡します。
| 上限の種類 | 法定休日労働を含めるか | 上期の点検で見る数字 |
|---|---|---|
| 1か月45時間(原則) | 含めません | 月ごとの時間外の最大値です |
| 1年720時間(特別条項) | 含めません | 起算日からの時間外の累計です |
| 単月100時間未満 | 含めます | 時間外と休日労働を足した最大値です |
| 複数月平均80時間以内 | 含めます | 2〜6か月すべての組み合わせの平均です |
| 45時間超は年6回まで | 含めません | 45時間を超えた月の回数です |
給与ソフトの「残業時間」は、そのまま渡してよい会社と直す会社に分かれます
所定労働時間が8時間の会社では、給与ソフトが出す残業時間をそのまま使えます。所定が7時間45分の会社では、8時間までの15分は法定内残業で、割増賃金の対象ではあっても上限規制には数えません。この15分を毎日足すと、月あたり5時間前後の差になります。
判断の分かれ目は所定労働時間です。8時間ちょうどなら給与ソフトの出力を渡します。8時間未満なら法定超だけを取り出した列を別に作ってから渡します。変形労働時間制を採っている場合は週や期間単位の計算が必要ですので、月の単純合計は使いません。削減効果の数字と労働時間の数字が食い違う理由については、「AIで年間1,200時間削減」と報告が上がったのに残業が減っていない話でも触れています。
名簿から外してよい人と、外すと点検が無意味になる人がいます
集計対象から誰を外すかで、平均も最大値も変わります。管理監督者を上限規制の集計から外すことは正しい処理ですが、労働時間の状況の把握は高度プロフェッショナル制度の対象者を除く全労働者が対象ですので、把握そのものをやめてよいわけではありません。役職名だけで外すと、いちばん働いている層が点検から消えます。
| 働き方の区分 | 上限規制の対象になるか | 折り返し点検でどう扱うか |
|---|---|---|
| 正社員・契約社員 | 対象になります | 全員を集計に入れます |
| パート・アルバイト | 対象になります | 法定8時間・週40時間を超えた分だけ数えます |
| 管理監督者 | 対象になりません | 上限の集計からは外し、労働時間の状況は別表で把握します |
| 裁量労働制の適用者 | 対象になります | みなし労働時間のうち法定を超える分を数えます |
| 新技術・新商品等の研究開発業務 | 対象になりません | 上限は適用されませんが、面接指導の要否を別に確認します |
集計はAIに任せ、協定を動かす判断は人に残します
ここまでの4点を文章にしてから渡すと、集計は数分で終わります。氏名は社員番号に置き換えてから貼り付けてください。社内データを生成AIに渡す前の線引きは、記録に個人名が残ったまま貼っていた事例と同じ考え方です。
上期の時間外労働を、次の定義で集計してください。
【定義】
・36協定の起算日は4月1日、対象期間は翌年3月31日まで
・「時間外」は法定8時間・週40時間を超えた分のみ。所定7時間45分から8時間までの分は含めない
・法定休日は日曜。日曜の労働は「休日労働」列に入れ、時間外には足さない
・役職コード9(管理監督者)と部門コードR(研究開発)は集計から除外する
【出してほしい表】
1. 社員番号ごと・月ごとの「時間外」「休日労働」
2. 起算日からの時間外の累計と、720時間に対する残り
3. 時間外+休日労働が単月100時間以上の月
4. 時間外が45時間を超えた月の回数
判断や助言は書かず、集計結果と、定義に当てはめられなかった行の一覧だけを返してください。
最後の1行が要点です。「残り352時間です」まではAIに出させてよい数字ですが、「だから特別条項の上限を引き上げましょう」はAIに言わせません。限度時間を超える運用には協定の締結と届出が伴いますので、そこは社内と社会保険労務士の判断です。
えらびの道では、こうした定義づくりを含む生成AIの業務活用を、半日の単発と標準コースの「研修」、実業務に伴走して定着させる「コーチング」の2軸で提供しています。勤怠や売上のような社内データを扱う場面では、渡す前の匿名化ルールとプロンプトの定型化を、貴社の実データを題材に一緒に作ります。費用面では人材開発支援助成金や自治体の人材育成補助の活用に対応しており、制度ごとの要件はAI研修に使える助成金・補助金まとめに整理しています。
下期の36協定の運用まで、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、大分県の中小企業に向けて生成AIの業務活用研修を行っています。研修だけを専門にしている会社ではなく、普段はシステムの受託開発と自社サービスの運用をしていて、生成AIはその現場で毎日使っている道具のひとつです。ですから、集計そのものよりも渡す前のデータの形で結果が変わるという話は、机上の知識ではなく実際に手を動かしてきた経験からお伝えしています。
研修では、汎用的な事例ではなく貴社が実際に使っている書類をそのまま題材にします。36協定届に書いた起算日をプロンプトにどう書くか、勤怠のExcelを時間外と休日労働の2列に分けるにはどの列を触るか、所定労働時間が8時間未満なら法定超だけをどう取り出すか。そうした手順を、貴社の様式のまま一緒に組み立てます。
えらびの道では、事前のヒアリングに伺うのも研修当日に立つのも代表の喜多です。貴社の勤怠の実情をお聞きしたうえで内容を組み直しますので、翌日からそのまま使える形で持ち帰っていただけます。大分市の人材育成応援事業などの補助金を使う場合は、申請書類の作成もお手伝いします。
下期の運用を決める前に、まずはオンラインで30分ほど、貴社の状況をお聞かせください。費用はかかりません。
よくある質問
36協定の年720時間に、休日労働の時間は含まれますか?
年720時間は法定労働時間を超えた時間外労働だけで数えますので、法定休日の労働時間は含みません。ただし単月100時間未満と複数月平均80時間以内の判定では休日労働を足して計算します。上限ごとに数える範囲が違いますので、勤怠データは2列に分けて集計してください。
勤怠データをそのまま生成AIに貼り付けても問題ありませんか?
氏名や住所を含んだまま貼り付けることは避け、社員番号に置き換えてから渡すことをおすすめします。あわせて、入力内容が学習に使われない設定になっているかを契約プランで確認してください。集計に必要なのは日付と時間数ですので、個人を特定できる列は落としても結果は変わりません。
上期で720時間の半分を超えていた場合、何から手を付ければよいですか?
まず起算日と数え方を確認し、実際に超えているかを確定させてください。そのうえで、45時間を超えた月がすでに何回あるかを数えます。年6回の枠が残り少ない場合は、下期の繁忙月をどこに置くかを先に決める必要がありますので、業務の前倒しや外注の検討はその段階で始めます。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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